会社員をやっていたころ、毎日がしんどくてむなしかった。
忙しいせいなのか、仕事内容のせいなのか、そもそも組織に所属することが合わないのか……「辛い」の本質さえ、わかっているようでわからない。
そんなことを考える暇があったら睡眠をとらなければ、と焦るばかり。
身動きがとれないまま、時間だけ過ぎていく。
でもある日、ふと、こう思いました。
「もし今、このまま死んだら、絶対後悔する」
死ぬ予定もないのになぜ急にそんなことを思ったのか。
ある種の防衛反応だろうと思いますが。
というのも過去に、辛い状況にただ耐え続け、鬱状態になったことがあります。
鬱は苦しいだけでなく、回復するのに相当時間がかかって、その結果、人生の質を(一時的にかもしれないが)大きく下げてしまうことを実感。
なので、鬱になるくらいなら勇気を出して環境を変えてしまった方がよい、と思うようになりました。
(むやみやたらと「逃げるな」と言う人がいますが、それは「自分の本心を見つめることから逃げるな」が真であって、「死にたくなるほどの辛い環境から逃げるな」ではないと私は思っています。)
辞めた
次の仕事が決まってから辞める、というのが一般的だと思います。
ですが、私の場合は、一日一日をこなすのに精いっぱいで、とても次の仕事のことなど考えられませんでした。
とにかく、休もう、休まなければ自分が壊れてしまう。
でもこんなときうるさいのが外野(特に身内)。
「この先どうすんの」とか「早く次探さないと」「年取ってから困るよ」とか「せっかくいい会社に入ったのに」とか。
そんなことくらい、言われなくてもわかってるんです。
自分が一番よく、わかってるんです。
それでもなお、今休むことが必要、そう思ったので誰にも言わず、こっそり辞めました。
とはいえ、「辞めたい」と思ってから実際に「辞められる」まで三年以上かかりましたが。
(すぐに辞められなかったおかげで、のちの生活資金を貯められたので、金銭面では良かったという見方もできます。何事も表裏一体ですね。ただし「辞められない」と悩んでいるうちにダウンしてしまっては本末転倒ですが)
やりたいことがわからない
会社を辞めてからしばらく、ひっそり休んでいました。
五年くらい経ってやっと元気が出てきたような感じです(途中で負担の軽いバイトを始めたりはしましたが)。
鬱まではいかなかくても、回復するのには想像以上の時間がかかるものです。
でも、辞めたことに対する後悔は一切ありませんでした。
むしろ辞めて本当に良かったです、私は。
休んでいる間、考えるのはこれからのこと。
合わない環境から脱するところまではできた。
この先、何をして生きていこうか。
でも。
なにがやりたいのかよくわからない……。
この「やりたいことがわからない問題」で悩んでいました。
そんなときにピッタリな本です。
中越裕史『「天職」がわかる心理学』(PHP・2011)
著者さんご自身、カウンセラーという夢がありながら、一旦は会社員となり、嫌々仕事をしていたそうです。
しかし、嫌な仕事でうまくいくはずもなく、会社を辞め、カウンセラーの勉強を始められたとのこと。
だから、合わない仕事に対するモヤモヤをよくわかっておられるので、読者に寄り添ってくれる内容となっています。
天職とは何か
今やっている仕事に違和感がある人に向けて、「本当にいまのままでいいの?」と問いかけるような内容になっています。同時に、心理学の面から「天職」について考えています。
詳細は本書に任せますが、仕事について、悩みや迷いがある方にはかなり参考になると思います。
私がいいなと思ったのはこちら。
こころを満たして働くためには好きなことを妥協なく追及することが、ひとつの基準になります。
引用元:『天職がわかる心理学』(p.60)
おお、好きなことを追求すればよいのか!とテンション上がりますが、よく考えてみると「好きなこと」が実はあいまいだったりしませんか(私はそうでした)。
「好きなこと」だと思っているけれど、どうもしっくりこない。
それは世間や親の価値観を踏まえた上での「好きなこと」かもしれません。
とにもかくにも全くわからない、ということもあると思います。
それはなぜかというと、「否認」という無意識の防衛機制が働いているから。
ギクッとするような文章が載っていました。
好きなことがわからない人は、自分の「好き」という気持ちを見て見ぬふりをしているのです。
だって、本当に好きなことを仕事にするには、たいていの場合、とても努力しなければなりません。資格が必要だったり、独立する必要があったり、とても長い下積みが必要だったり。しかも、頑張って努力しても失敗してしまうかもしれません。
(中略)
そこで、自分の自尊心を守るため、好きなことも興味のあることも、すべてなかったことにしてしまいます。つまり“否認”のシステムが働くのです。
引用元:『天職がわかる心理学』(p.66-67)
これ、身に覚えが……。
高校生の頃、実はバンドに興味があったのですが、「バンドとは、イケてる人しかやってはいけないものである」と謎の制限を設けていました。
だから興味のないふりをしていました。
大後悔しています。
結局、大人になってから趣味で始めましたが、高校くらいからやっておけば……と思わないでもないです。
プロになるとかでなくても、若いうちに始めていたら、もっと楽しい時間が増えたかなぁ、と。
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本当にやりたいことの見つけ方
こういったトラップから抜け出し、本当にやりたいことを見つけるにはどうしたらよいか。
本書には具体的な見つけ方が書かれています。
(やりたいことを見つける方法について、引用の形式で紹介していたのですが、本の内容に踏み込みすぎているかも、と心配になったので、削除しました。詳しく知りたい方は本書をご覧ください)
私の場合
本書を読みながら見つけた私のやりたいことは「いろんなものを見聞きしたい」でした。
具体的にいうと、本を読んだり、旅行したり、博物館に行ったりしたい。
自分に知識経験を入れ込みたい、ということでしょうか。
でも……それってインプット系だからアウトプットである仕事には結びつかなさそう。
というわけでもう一段階、深堀りしてみました。
「本読みまくり、旅もした、いろんな経験もした。ではそのあと何をする?」
出てきた答えは「何かを創りたい」でした。
何か、とは服、工作、絵……いくつか候補があるので、試していくうちに「コレ」となるのかもしれないし、一つに決めずにいろんなものを創る、でも良いのかもしれません。
ブログもの候補の一つです。
でもまた壁が…
さて、ようやく「好きなこと」「やりたいこと」がなんとなく見えてきた。
すると新たな壁が生じるんですよね……(嫌というほど体験済み)。
「でも、自分には才能がないから」
「でも、もう歳だし」
「でも、実際に仕事にできるのはほんの一握りのひと。ほんの一握りに入れるわけがない」
できない理由って際限なく湧いてくるものです。
では、どう乗り越えていったらよいのでしょう。
天職・やりたいこと探しの場合も、スモールステップが大事
自信があろうがなかろうが、その出てきた「やりたいこと」を1日5分でいいからやる、というのが解決法。
1日5分でいい
最初の行動は、もっともっと小さな行動。1日に5分くらいのことでいい。それも苦しい努力ではなく、自分が楽しいと思えることをやる。
最初はただの遊びでいいんです。苦しい努力が必要なことから初めてしまうと、辛いのでやっぱり長続きしません。
そうすると、「長続きしないなら、やっぱり本当に好きなことじゃないんだ…」と無駄に自信をなくすことになる。これはすごくもったいない。そんなことなら苦しい努力なんて、やらないほうがずっとマシです。
引用元:『天職がわかる心理学』(p.118)
ああ、耳が痛い。
苦しい努力で自分をつぶしてきた過去を思い出します。
早く成果を出したい
↓
やけに高い目標を立てる
↓
かなり頑張らないとできない
↓
苦しい
↓
こんなに苦しいってことは、やりたいことではないのかも
↓
やめる、自己嫌悪
この状態に陥りがちでした。
せっかくやりたいことを見つけても、やめてしまったら本末転倒ですので、ハードルは低めに設定するのがコツなのですね。
(習慣化の本にもスモールステップの大事さが書いてありました)
おわりに
実践してみて感じた1日5分の効果
上記の習慣化の本や本書をきっかけに、ものづくり(手芸、工作、絵など)を1日5分~始めました。
三週間が経ちましたが、毎日コツコツやるって本当にすごいことだと実感しています。
今日は時間ないなーという日でも「まぁ、5分だけでもいいんだから」と思えば重い腰もなんとか上がります。
気づけば一時間くらいは経過していたりします。
やっているうちに「こうしてみたらどうだろう」とかどんどん湧いてくるので、前進している感もあって嬉しい。
この「こうしてみたらどうだろう、やってみよう」をずっと繰り返していたら、仕事のレベルにまでもっていける、ついには天職にまでなる、そんな場合もあるのだろうと思いました。
私自身、まだまだ積み上げている途中です。
好きなことなので、毎日が楽しくなりました。
「天職」がわかる心理学 | 中越裕史著 | 書籍 | PHP研究所
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やりたい仕事をつくってしまう、という考え方もあります。