ししもとの読書ノート

生きづらさの軽減をめざして

毒親は遺伝子に操作されている!? |感想『ウソばっかり!-人間と遺伝子の本当の話ー』竹内久美子

はじめに たまに違うジャンルの本を読むと新鮮

ここ6年くらい、心理学とか哲学とか自己啓発系とかの本をひたすら読んできました。

本から得た知識は、自分の人生について考えたり、心の葛藤を乗り越えたりするのに、とても役立っています。

何かモヤモヤすることがあったら、そのテーマに関連した本をすぐ買って読む。そして飽きるまで考える。これでだいぶ楽になるとわかりました。


しかし。似通ったジャンルの本を何百冊も読んでいると、「これ、前にも見たことあるな」という考え方や文章が増えてきます(そもそも自己啓発書の類は、名著を現代風にアレンジしたものだったりしますし、一見新しい考えであっても、その著者は必ずどこかで名著や偉人に影響されていると思うので、当然といえば当然かもしれません)。

要するに「自分に必要なものはだいたい読んだ」ということで、次第に「何か目新しいものはないか」という気持ちにシフトしつつある今日この頃。

とはいえ、「もう飽きてきたからしばらく本はお休み」と思っていても、数日すると「あー、本読みたい」となってしまう。

で、読んでみると「まぁ、だいたい知ってた」みたいになる。
倦怠期ですね。


そんなときは、普段読むものとは少し違ったジャンルの本を読むのが有効です。

違うジャンルとはいえ、あまりにかけ離れすぎると、興味がなくて読むのがしんどい。

ですから、本屋さん(できれば普段行かない店舗がおすすめ)の普段見ないコーナーをぶらぶらしながら「ちょっと気になる」ものを数ページ読んでみて、「おもしろそう!」となったら、買い、です。

そうやって今回選んだ本は

竹内久美子『ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -』ワニブックス(2018)

ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -

ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -

 

 

 

どんな本?

まず、個人的な感想として、すごくおもしろかったです。

人間に関する疑問(例:なぜ美人・イケメンに魅かれるのか、など)を、主に動物行動学の観点から解明、解説しています。

科学的とはいえ、一つの考え方に過ぎず、絶対に正しいというわけではないですが、個人的にはなかなか納得感があるなあ、と思いました。

小難しい説明もないので、理系っぽいのはちょっと…という方でも読みやすいのではないかと思います。


以下、私が妙に納得してしまったところや、斬新な考えだなあと感心したところ。

 

そうだったのか! 一目惚れについて

一目惚れ、ってなんだか良くないことのような気がしていました。
だって、一目ですよ。
中身を全く知らないのですよ。

目に映る範囲のことだけで良いとか悪いとか判断するなんて、軽々しい感じがするような…。

子供の頃から周りの大人たちによって「男は顔じゃない」と言い聞かされてきましたし。

にも関わらず。

ただ街で見かけただけ、すれ違っただけの人に「うわっ、うわっ、ものすごく好みの人がいる!」となったことがこんな私にも一回あるのです(もともとは惚れっぽいタイプではない)。

この「ものすごく好みの人」が一般的にいわれる「イケメン」に当てはまるかどうか、自分でもわからなかったりするのですが、とにかく自分にとってはすごくピッタリという感じで、衝撃的だったのです。

とはいえ。
いやいや、何を言うとるんだ、私よ、と。
見かけただけで何がわかるのだ、何も知らないのに、と理性は言います。

理性に叱責されているうちに、自分がとんでもなく浅はかな気がしてきて、自己嫌悪にさえ陥ったりします(もちろん何かしらの行動に出られるわけもない)。


ですが、本書によれば、一目惚れで異性を選ぶことは、動物行動的には間違っていないというではありませんか!

 ルックスのよさとは、動物行動学や進化論の分野では、ずばり免疫力の高さ、つまり病原体と戦う力の高さを意味します。

引用元:竹内久美子『ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -』ワニブックス(2018)p.17

あえて簡潔にすると、美男美女=免疫力が高い、ということ。
臭くないことも免疫力の高さを表しているそうです。

  つまり、一目惚れとは、免疫力の高さを見抜き、惚れるということ。一目惚れしやすい人とは、相手の免疫力を重要視する人だと言うことができるでしょう。

引用元:竹内久美子『ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -』ワニブックス(2018)p.18,19


外見、性格、経済力…etc。

人によって何を重視するかは違いますが、外見重視の人は免疫力重視だということですね。

だとすると、一目惚れの相手が必ずしも「誰もが認めるイケメン」とは限らないことも説明がつくなと思いました。

おそらく、自分の免疫との相性が良い(子供を持った場合に、免疫力の高い子供が生まれる組み合わせ)ということなのでしょう。

個人的に、一目惚れなんて浅はかだ、と思い込んでいましたが、動物行動的にいえば、ある意味効率的なことだったのですね!
罪悪感感じる必要なし!

まぁ、実際問題、一目惚れの相手とどうこうなるのは難しいとは思いますが…。

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毒親の存在理由

本書で最も衝撃的だったのが、毒親に関する解説。
ここを読めただけでも満足です。

まず、毒親について。
最近よく耳にするようになったので、ご存じの方も多いとは思いますが。

毒親とは、一言で言うなら、親であることの権威を振りかざし、子を過剰に支配しようとする親。

引用元:竹内久美子『ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -』ワニブックス(2018)p.74

 
私の親もこれです(特に母)。

小さい頃から「(母の)理想とする娘」でないと許されませんでした。

少しでも逆らおうものなら、「お母さんの言うこと聞かないんだったら、あんたを置いて出て行くんだからね!」と何度脅されたかわかりません。

もともとやせ形なのに食事制限されたことも(幼少期)。
視力が悪くて黒板の字が見えないのに「ブスになるからダメ」とメガネを買ってもらえず。
「あの子とは遊んじゃダメ」と友人関係に立ち入るなんてのも日常茶飯事。

また母は学歴コンプレックスみたいなものが強かったので、勉強に関しては特に干渉してきました。
98点をとったとき「なんでこの2点落としたのよ!」と言われるし、一番でないと知ると「なんであんな子に負けるのよ!」と何時間もネチネチと言われるのです(あんな子、ってすごく失礼な言い方ですし、当時中学生ながら腹が立ちました)。


勉強ができていればなんとかなるだろうと考えた私は、必死に努力して大学院まで進み、専門職につきました。これでようやく母も満足してくれるだろうと思いきや、大いに甘かった。

今度は私が独身であることが気になり出したらしく、「結婚、結婚」と言いだしたのです(それまでは「今妊娠したらあんたの人生終わるんだからね」なんて脅していたくせに)。

さらに「あんたが高学歴になったのがいけないのよ。適当な女子大に入って、インカレサークルで良い人捕まえればよかったのに」と追い打ちをかけてくる始末。

男友達や同僚(男性)の結婚式に参列する度に「なんで他の女にとられなきゃならないのよ!どうしてその人(新郎)に結婚してくれって頼まなかったのよ!」なんて恐ろしいことを言うのです(相手にも私にも選ぶ権利ってもんがあるでしょうよ、としばしばうなだれました)。

届いた年賀状をひとしきり眺めた後「はぁーあ、私だけ孫がいなくてかわいそう」とねばねばした目で母に見つめられたとき、(この人を満たすことは、私には一生できない)と思い知り、いろんなものがプツッと切れたのでした。


失礼しました、ちょっとヒートアップして話が逸れてしまいましたが、こういう毒親、実は結構いるんですよね。

著者さんの母親もまた、毒親だったそう。
だからこそ、毒親に関する考察も鋭いものとなっています。

親が子の行動に、かなり深いところまで介入するというのは、動物本来の性質として当たり前だということです。子とは自分の遺伝子のコピーの半分を受け継いでいる存在。そして生物は自分の遺伝子のコピーをいかに次の世代へと受け渡していくかの理論で動いている。とすれば親が子の行動を操り、自分の遺伝子のコピーを最大限その次の世代へ残そうとするのは当然の行いです。

引用元:竹内久美子『ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -』ワニブックス(2018)p.78

 

ひえー。子への介入は遺伝子の仕業だなんて。こわいこわい。
(確かに、私の母も悪気自体はなかったのだろうと思います)

しかしこの介入も、度が過ぎれば逆効果のはず、と当事者の一人としては思うのです。

実際私は母との関係がトラウマで、子を持ちたいという気持ちを失った間です(こういうことを表明すると世間からは怒られてしまいますが……)。


子孫繁栄に逆効果ということであれば、今後はゆるめの毒親だけ残って、強烈な毒親は淘汰されていくのでしょうか。

そう仮定してみると、確かに強烈毒親育ちの私は子を残す気がないわけですから、その遺伝子は途絶えそうです(ちなみに一人っ子)。


ただ、そういった、逆効果になるという危険性もはらんでいながら、毒親がいなくならないのはなんでだろうと思う私に、著者さんはこんな理由も提示してくれました。

 私が常に思っていたこと、それは、こんな親からは一刻も早く離れて自立したいということでした。実はこれが毒親1つの戦略として存在し、いつまでたっても“毒親遺伝子”とでも言えるものがなくならない理由ではないかと思います。

引用元:竹内久美子『ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -』ワニブックス(2018)p.78

 

親から離れたいと思わせることが戦略ですと!?

でも確かに、私も何度も思いました。
特に十代後半、親と縁が切れないことに絶望していましたし。

何しろ子が早く家を出て独立すれば、その子は早めに次の繁殖を始めることになります。避妊法が確立された現在とは違い、かつては親元を離れ、誰か異性と暮らしをともにするということは即ち、子ができることを意味していたのです。

引用元:竹内久美子『ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 -』ワニブックス(2018)p.79


若くして家を出る→経済力もないし、精神的にも不安なので誰か異性と暮らすことになる→(避妊法が確立しない時代であれば)子ができてしまう=毒親遺伝子目標達成、ほくそ笑む!
というわけですか。

衝撃です。
ああ、現代に生まれただけまだマシだったかも。


子を持ちたくない自分を異常者だと思って責めてきたけれど、人類の進化の大きな流れのなかで考えれば、長い時間をかけて滅びる遺伝子があることもまた進化なのかもしれません(※あくまで動物行動学的にいえば、ですが)。

 

おわりに

「本音と建前」という言葉がありますが、普段口にしがたい「本音」の方にグッと切り込んでくれる(あくまで動物行動学的に)要素のある本であり、スッキリした読後感を得られました。

長年「私の考えはおかしいんだろうか」とモヤモヤしていたことが「なーんだ、生物学的には仕方ないんだ」と思えたりもしました。
おもしろかったです!

ウソばっかり! - 人間と遺伝子の本当の話 - (竹内久美子) | ワニブックスオフィシャルサイト

 

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