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つい相手の希望に沿った行動をとってしまう
私には、「相手はこう答えてほしいんだな」と相手の希望を予測して即答するクセがありました。
”正解”を答えないと母の機嫌をひどく損ねたという経験があるからです。
(>>>【機能不全家族】夫婦喧嘩の後の「お父さんとお母さんどっちについていくのっ!!」がつらかった)
子どもの頃の私には必要な防衛反応だったので、「相手の希望を予測して動くこと」自体は仕方がなかったと思います。
けれど、その行動様式が大人になっても続いてしまい、困るようになりました。
相手を慮ることは、一見良いことのように思えるかもしれませんが、日常的に繰り返していると、自分の行動なのに自分本来の要素が皆無になっていくんですね。
すると、「彼女は苦労が好きなんだな」とか、「人に奉仕するのが好きなんだ」などと誤解されて、ますます自分の望まない方向に進んでしまうのです。
特に組織に所属していると、強気な人とか、「自分さえよければ」「利用してやろう」思考の人と接する機会が必ずあります。
彼らは、押し付けるのが超絶上手いです(人をうまく使うことで最終的には”結果”も出すので、会社からは評価されて出世もします)。
彼らからしたら、「ちょっと強く言えば従ってくれる人」は「いいカモ」です。
私自身も、会社員時代、強気な先輩のまさに「いいカモ」でした。
自分ばかりが残業して心身ともにすり減ってゆきました。
じゃあ、組織で力を発揮するには、「口調や押しの強さ」を身につけるしかないのか?
いいえ、そんなことないですよね。
同じ時期に入社した同僚を見まわしてみると、それぞれの苦労はあるにせよ、誰も「いいカモ」にまではなっていませんでした。
ぱっと見、「穏やかで言い返してこなさそう」「都合よく扱われそう」な人でも、なぜかうまいこと飄々と過ごしている人すらいたのです。
なんでだろう???
ということで、その飄々とした人(A氏とします)を観察したことがあります。
穏やかで優しいのに、周囲に巻き込まれない人を観察してみたら……
A氏は基本的に寡黙で、必要なこと以外はあまりしゃべらないタイプの人。
人の話をむやみに否定しないし、雰囲気も穏やかなので、「ちょっと強く言えば屈しそう」にも見えました。
だから私はA氏のことを「この人、都合よく扱われないのかな、大丈夫かな」とむしろ心配していたほどです。
でもあるとき、こんな場面に遭遇しました。
その日、A氏と私は、同じ時期に入社した人たちとの飲み会に出席していました。
すると偶然、A氏の先輩グループと遭遇しました。
すごすごと寄ってきたのは、「ちょっと怖い」と噂のB先輩。
A氏は、そちらの飲み会にも誘われていたようで、酔ったB先輩に
「おいお前! なんでここにいんだよ!!
用事があるから行けないって言ってたくせに!!」
と結構強い口調で責められていました。
近くにいた私は、「うわ、終わった」と思いました。
私なら、「すいませんすいませんすいません、こっちのほうが先に決まってたんです、ほんとはそっち行きたかったんですけど」みたいな必死のご機嫌取りをする場面です。
ですが、A氏は一切慌てる様子がありません。
どうするんだろうと見守っていると、A氏は3秒間の沈黙ののち、
「・・・(3秒経過)、えぇ」
と。
便宜上、「えぇ」と書きましたが、「はい」だか「はぁ」だか「うん」だか「すん」だか、捉えどころのない相槌を打っただけでした。
まるで、雲を吐き出したみたいな、そんな軽さでした。
すると、B先輩も予想外だったようで、一瞬、鳩が豆鉄砲をくらったような表情をしました。
ただ、強い口調で言った以上、引き下がれないと思ったのか、
「ったく、せっかく誘ったのに!」
「結局そっち優先かよ!」
とは言っていましたが、明らかに最初の勢いは削がれていました。
刀を抜いた以上、簡単にひっこめられないけれど、素振りして終わる、みたいな。
私はこれを見て衝撃を受けたのです。
強い口調で責められても、「ちょっとの沈黙+捉えどころのない相槌」でもいいんだ!と。
むしろ、下手に言い返すと、相手もヒートアップしてくるので厄介ですよね。
後でA氏に、「さっき平然としててすごかったね、私ならあんなにきつく言われたら気にしちゃう」と言ったら、「まあ、先輩も酔ってたから」とのこと。
相手を悪く言うでもなく、やっぱり飄々としていました。
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沈黙したら嫌われるのでは?と不安だったけれど……
A氏を見ていて、場合によっては「沈黙」が有効であることに気づいた私。
ですが、当時は「私にはとてもできない」と思いました。
A氏はきっと特別な存在で、私ごときの人間が沈黙したら嫌われるに違いない、と。
でものちに、沈黙されたからといって、それだけでは相手のことを嫌いにならない、と身をもって体験しました。
実はお恥ずかしながら、私自身もA氏に「沈黙」をくり出されたことがあるのです。
具体的には忘れてしまったのですが、たしか、特定の誰かの愚痴をついA氏に言ってしまったことがあるんです。
A氏はポカンとしたような表情の後、どこか困ったような顔で黙っていました。
沈黙は3秒にも満たなかったと思いますが、私的には、ものすっっごく長く感じたんですね。
その間に考えたことは
「あっ、しまった! 私にとっては嫌いな人の愚痴だからさも正しいかのように発言してしまったけど、A氏にとってはそうでもないんだ! あー失望されちゃったかな……。共感してもらえないのは悲しいな……まあでもたしかに愚痴はよくないよな」
と思考がまわるまわる。
そして、「A氏にとっては、このラインは踏み越えちゃいけないんだな」と理解し、以降、愚痴には気をつけるようになりました。
共感されないことに対してつらい気持ちにはなったものの、でも、だからといって、A氏のことを嫌いになるとかそんなことはなかったんです。
むしろ、「きちんとした自分軸を持っている人」なのだと思いました。
全ての会話でことあるごとに「沈黙」を挟んでいれば、そりゃ「話が合わない」とか「嫌われているんだな」となりますが、普段普通に会話できるような関係であれば、「一瞬の沈黙」はマイルドな自己表現になるのだな、と思います。
実際、このA氏、ほかにも様々な場面で、「適切な沈黙」を操っていましたが、周囲からは非常に好かれていました。
不快なときは沈黙してもいい
「ちょこっとの沈黙」が有効だからといって、すぐにできるものでもないかもしれません。
試しに沈黙してみたとしても「うあー沈黙してしまったー!相手はどう思っただろう!?」などと焦ってしまうのであればむしろ辛くなってしまいます。
だから、できそうな場面があったら、少しずつやってみればいいのだと思います。
ただし、沈黙しつつもムッとした表情を出してしまうと反撃と捉えられて「なんだその目は!」などと攻撃されることがあるので、あえて「ポカン」としたり、「うーん?」と考えているフリをしながら沈黙するのがコツかなと思います。
なお、沈黙をやたら多用して人をコントロールするのはやめましょう(不機嫌で人をコントロールするのと同じになってしまいます)。
あくまで、不快なときに「NO」と声を出す代わりに、1~3秒くらい黙る、という感覚です。
おわりに
非常に穏やかで優しいのに、あまり人に巻き込まれずに飄々と生きている人観察した結果、「沈黙」を上手に使っている、というお話でした。
ムッとした表情だと反撃される可能性があるので、あえて「ポカン」としたり、考えているフリをしながら「沈黙」するとよいと思います。
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