ししもとの読書ノート

生きづらさの軽減をめざして

おもりを捨てて、住みたい街にたどり着いた |お題『住みたい街、住みたかった街』

 



20代後半の私は、とにかく人生に行き詰まっていました。

今となってはよくわかるのですが、原因は
「自分で選択したことに、自分自身がまったく納得できていなかったこと」。

言い換えると
「親や、親戚や、常識や、世間や、周りの人がヨシとするであろうものごとのなかで、一番マシなもの」
を選んでいたからです。

服装も「好きではないけれど無難な」ものを、
進路や仕事も「やりがいより親や親戚が認めてくれる」ものを、
職場で「生意気な新人と思われないような、うざい先輩と思われないような、いえ、できれば良い人と思われるような」ふるまいを。


子どもの頃から、「周囲の期待に応えてこそ、私は生存を許されるのだ」と思っていました。
逆にいえば、「期待に応えられないのなら、おまえは生きていてはいけない」と、非言語ではありましたが、確実にそう教えられてきました。

けれど、誰かの期待に応えようとすればするほど、「本当に自分が好きなもの、選びたいこと」からどんどん遠ざかってゆきます。

周囲の人全員が手放しで認めてくれるもの、なんてこの世にないからです。

そのことに薄々気づいてはいながらも、自分を貫く勇気が持てませんでした。

そうして長い時間をかけ、私は精神的に死んでいきました。

精神的な死は、肉体をもむしばんでいきます。
食事が摂れなくなり、夜眠れなくなり、自ら爪をむしり剥がしたりするようになりました。
他にも諸々の困った症状が出て、いわゆる「普通の日常」を送ることが困難になってしまいました。


そこまでいってやっと、「アっホらし。やーめた」と思えました。

「真面目で優秀な私」も、「親や先生や上司に逆らわない従順な私」も、「嫌いな人にもいい顔をしてしまう私」も、「断れない私」も、全部やーめた、と。


「あなたのために言ってあげてるのよ」
ありふれた戯言を、阿呆みたいに信じてやってきましたが、私が心から手にしたかったものは何一つ、手に入りませんでした。

「自分じゃなくて、人の顔色ばかりうかがっていたら、欲しいものは決して手に入らない」

30年弱かけて、ようやく手に入れた教訓です。


そこから新たに私の人生は始まりました。
結果が良かろうが悪かろうが、誰かに嫌われようがガッカリされようが、とにかく自分の意志で選択する。

もちろん、偽りなき本心で選択したって、思うような結果が得られるとは限りません。
でも確実にいえるのは、納得感はある、ということです。

「あのときはこれがベストと思ったのだから仕方ないや」とか「自分で選べただけで今までよりマシ」と思うなり、自分の見る目のなさを反省するなり、失敗を今後に生かそうと思うなり、納得感があるおかげで後悔しなくなりました。

「あの人に反対されたからできなかった」という無力感や、人のせいにして思考停止することがない。
これが実はとても大事なのではないかと思うのです。



そしていま私は、かつて私が「住みたい」と思った街に、自らの心からの意志で、住んでいます。

以前の私なら、とても考えられないことでした。

実家や親から離れることは悪いことだ、と思っていたから。
安定した働き方以外はダメだ、と思っていたから。
自由にふるまうことはわがままだ、と思っていたから。
引越しなんてお金がもったいない、と思っていたから。


いつのまにか身につけまくっていた重りを一つひとつ捨てました。
重すぎて捨てるのに苦労したりしながら。


数年かけてやっと、少しだけ身軽になった私は、初めてのひとり旅にでました。

いい歳して初めてのひとり旅、ドキドキしながらたどり着いた街は、想像以上に素敵なところでした。

空が大きくて広くて、夕焼けが信じがたいほどきれいで。
風が穏やかで、木々の新緑がうっとりするほどきれいで。
混雑しすぎることはないけれど、それなりに賑わっていて。

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いつしか、快速と名がついているけれどのんびり走る電車が、その街に近づいていくとき、なぜか「ああ、帰ってきた」と思うようになりました。

え、なんで? 「帰ってきた」?
縁もゆかりもない土地なのに?
旅行で数回来ただけなのに?


そしてなぜか思いました。

ああ、いつか私はこの街に住むんだな。

そう思うと、妙な納得感があったのをよく覚えています。


それから約二年後、私は本当にその街に移住しました。

誰一人知り合いもおらず、最初はどうなることやらと思ったのですが。

徐々に自分なりのペースもつかめてきて、
「ああ、理想の暮らしにたどり着いてしまった」
と毎日かみしめています。


住みたかった街での、自由な暮らし。
本当に欲しかった大きなものを一つ、手にいれました。


 

書籍化記念! SUUMOタウン特別お題キャンペーン #住みたい街、住みたかった街

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by リクルート住まいカンパニー