親の存在が苦しい人のためのブックガイド

おもに親子関係や人間関係の本の感想です

【本】「母という病」- 悲しみを言葉にしつくす→親への否定的な思いが薄まると人生はよくなっていく

最初に読んだのはもう10年以上前。

そのときは、頭が混乱していたこともあって、あまり読みこなせなかったのですが、改めて精読したら「回復の手がかりがしっかり書いてあるじゃん」となりました。

精神科医・岡田尊司氏の母という病

母という病

母という病

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※私が読んだのは単行本なので該当ページは異なりますが、内容自体はあまり変わらないと思われます。

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どんな本?

本書は母という病に向き合い、その人の身に何が起きるのかを理解し、そこから回復するための手がかりを提供するものだ。

岡田尊司『母という病』ポプラ社(2012)P.15

 

本書の半分以上は「子を病ませる母」の具体例や解説に割かれており、ここをじっくり読むのはしんどい人も多いと思うので、最終章の「母という病を克服する」だけしっかり読むといいかも。

たくさんの症例を診てきた医師によって書かれているので、回復のプロセスも比較的わかりやすい(順序立ててある)気がします。

過去記事を振り返りつつまとめていきます。

 

愛されないと脳の構造自体に影響

「子どもの頃は大変だったのかもしれないけれど、今は大人なんだから関係ないんだからさ、前向きにいこうよ」的な、アダルトチルドレンがよくかけられる言葉。

「たしかにそう(正論)なんだけど……そんな割り切れるものでもないというか、どうしても納得がいかないんだよなあ」と思ってきました。

その答えが本書に書いてあり、とても納得しました。

幼い頃に愛情をかけられないと、オキシトシンの働きが鈍る
 ↓
不安やストレスを感じやすい体質に
(不安遺伝子をもっているとより影響を受ける)
 ↓
人生に影響

詳細:幼いころに受けた心の傷は脳の構造自体にも影響する


この、オキシトシンの欠乏によって、うつ、不安障害、摂食障害なども引き起こしてしまいます。

詳細:潔癖、不安、うつ、拒食、「子どもをもちたくない」も……母親との関係が影響していた

私自身も、ほぼひと通り心当たりがあり「どうしてこんな変な性質になっちゃったんだろう」と悩んできましたが、オキシトシン不足だったんだなあ、と腑に落ちました。

子を病ませる母3選

わざわざお腹を痛めて生んだ子をどうしてかわいがれないのかというと、母もまた愛着の傷を抱えているから。

大きく分けると3タイプ。

不安定母の特徴ー突然キレる、愚痴、依存的、母子の役割逆転

自己愛型母の特徴ー自分一番、子育て嫌い、気に入った子だけかわいがる

生真面目母の特徴ー「べき」にこだわる・価値観押し付け・結果しか見ない


このパートは読んでいると「やっぱうちの母おかしかったんだな」と確信を持てるメリットはあるのですが、「あーあ、変な親に当たっちゃったな……」となって、心理的な負荷も大きいので、余裕がある人以外は飛ばしてもいいかもしれないです。

回復の手がかり

1:気づく→物理的にも心理的にも距離をとる

2:安全基地をつくる

3:傷つかない生き方にシフトしていく

 ・否定的な口ぶりをやめる

 ・日常でやたら傷ついてしまうのを防ぐには

 ・ 自分の思いと他人の思いを混同しない 

4:自分に向き合う

 ・傷ついた思い・悲しみを出し尽くす


以下に、少し詳しく説明していきます。

心身とも距離をとる

📍まずは、1:気づく→物理的にも心理的にも距離をとる のが第一段階。

とてもエネルギーの要ることですが……必要なプロセスだと私自身も思っています。

害を与えてくる親のそばにいることは、わずかに毒を盛られた食事を食べ続けて常に微妙に体調を崩しているのと同じようなもの。

仮に、毒に慣れたように見えたとしてもそれは単に麻痺しているだけで、じわじわ悪化し、最終的に大きな不調につながってしまう。

だからこそ、心身ともに距離が必要になります(罪悪感もすごいし、大変な過程だけれど)。

安全基地をつくる

親と距離をとったら、2:安全基地をつくる

ありのままで存在できる「安全基地」がなかったからこそ、こんなに苦しいわけで。
改めて、自分で安全をつくる必要があります。

否定せずに話を聞いてくれる人が身近にいればいいですが、正直、そう簡単なものでもないですよね(いないからこそ病んでしまっている)。
となると、自分に合う治療者やカウンセラーを探すというのが現実的な線でしょうか。

あるいは自分で自分の安全基地をつくることもできます。
私自身は、「書くこと」が安全基地となりました。
(サブブログ:アダルトチルドレン回復のきろく


ただし、安全基地の構築には少し時間がかかる。
話を聞いてくれる人が見つかったとしても、すぐにその場で全部解決するというものでもありませんものね。

だから同時に、傷つかない生き方にシフトしていくこともまた大事。

否定的な口ぶりをやめる

未熟な親に育てられていると、否定的なものの見方を無意識のうちにコピーしてしまっていることがとても多いです。
しかし、この否定的な口ぶりこそが、人生を悪化させている元凶

ネガティブに慣れきっているので、抵抗があるかもしれませんが、ポジティブな反応(笑顔など)を心がけたり、ものごとの良い面に注目するのが大事。

詳細:否定的な口ぶりをやめる

 

日々の問題にうまく対処する技術を

上とも関係しますが、「母という病」の人は何事も悪いほうに捉えてしまいがち。
感情的になりすぎたり、思い込みで判断したり。

事実と思い込みを分ける、客観視するなどの習慣が必要になってきます。

詳細:日常でやたら傷ついてしまうのを防ぐには

 

自分の思い≠他人の思い

「母の意志=子の意志」を強制されていると、自分の気持ちと他人の気持ちを区別するのが難しいですよね。

「たぶんこうしてほしいんだろうなあ」と相手の顔色をうかがいながら生きていると、本心が置き去りになり、とてもつらくなってしまう(しかも、親向けにカスタマイズされた「こうしたほうがいいだろうなあ」なので、目の前の相手にとってそれが妥当とも限らない)。

いずれにせよ、本心を偽っていると、人生をムダにしてしまいます。
本心をごまかさないためには、自分の気持ちを常に言語化しておくことが大事。

詳細: 自分の思いと他人の思いを混同しない 

 

悲しみを出し尽くす

「安全基地をつくる」とも重複するのですが、傷ついたこと、親へのネガティブな思いを見て見ぬフリしていると、いつまで経っても怒りが再燃して前に進めない、みたいなことになりがち。

私自身もブログ(アダルトチルドレン回復のきろく)に書きまくりました。

はじめのうちは「こうして恨みを垂れ流しまくりながら一生を終えていくのか」と絶望しましたが、どんな小さなことも、完全に書ききった今、ほとんど出てこなくなりました。

親への否定的な思いが薄まる→自己否定が薄まる→他人にもやさしくなれるという、良いループに入っていけます。

詳細:傷ついた思い・悲しみを出し尽くす

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おわりに

繰り返しになりますが、「母という病」からの回復の手がかりは

気づく→物理的にも心理的にも距離をとる

 ↓

安全基地をつくる

 ↓

傷つかない生き方にシフトしていく

 具体例:否定的な口ぶりをやめる

 日常でやたら傷ついてしまうのを防ぐには

  自分の思いと他人の思いを混同しない 

 ↓

自分と向き合う:傷ついた思い・悲しみを出し尽くす