ししもとの読書ノート

生きづらさの軽減をめざして

実力主義とはいうけれど、実際は多大な認知バイアスがかかっている |感想『人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』ふろむだ

以前、はてなブログのトピックスか何かに取り上げられていて、気になっていた本。


ふろむだ『人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ダイヤモンド社・2018)

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

 

 

 

気づけば、どこの書店でも平積みされている。
(先日テレビでも取り上げられたみたいですね)

最初は、(おお、売れてるんだなー)と思いつつ、「しばし様子見」と自分に言い聞かせていました(とにかく本をすぐ買ってしまう人間なので)。

が、本屋に行く度に目にしているうちに、やっぱり気になり、結局買ってしまいました。

たしか、心理学で、何度も見ていると好きになる的な効果があったと思うのですが(今調べたらザイオンス効果(単純接触効果)だそうです)、それの一種なんですかね。

人間に関しては、単純接触効果を感じたことがない(→つきあっていくうちに好きになるということが皆無。これはこれで不便)のに、本に関してはまんまとひっかかってしまいます。


どんな本?

近年、日本も、年功序列から実力主義になってきているような雰囲気がありますね。
しかし、実力主義って言うけれど、本当に実力が評価されているといえるのか。

否。
むしろ、成功するかどうかは、ほぼ運である、と著者は言います(成功確率を上げることはできるけれど)。

では何が評価されているのかというと「錯覚資産」なるもの。

錯覚資産とは、

自分の得になるような、他人の勘違い

引用元:
ふろむだ『人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ダイヤモンド社・2018)p.16

 

 

わかりやすい例だと、イケメンの人は選挙に当選しやすい、など。
このとき、投票するほうは「イケメンだから投票した」とは決して思っておらず、「政治手腕などが優れているから」と投票しているつもりなのだそうです、意識の上では。

しかし、実際は、イケメンという優れた要素があることによって、他の能力まで優れているように見えているだけ。
いわゆるハロー効果ですね。

何か一つ大きな実績がある人などもそう。
一度成功したからといって、次に成功するかどうかは本当はわからないのに「こんな実績があるから彼なら次も大丈夫だろう」なんて思いがちです。

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このような「勘違い(認知のゆがみ)」を他人がしてくれることによって、錯覚資産は形成されます。

錯覚資産があると、それだけ実力がある風に見えるので、チャンスが回ってきやすい。
こなしているうちに次第に本当に実力がついてくる。

最終的に、錯覚資産なし・チャンスも巡ってこない人とは、多大な差が生じてしまうわけです。

本書は、錯覚資産について心理学の知識をふまえながら解説し、実力主義の欺瞞を暴いている本です。

そして、錯覚資産を増やすにはどうしたらよいか、ということにも言及しています。

 

良かったところ

試行回数を増やす

先にも書いたように、個々の成功はほとんど運。
運はコントロールできませんが、成功確率を上げることはできる。

具体策の一つがこちら。

チャレンジして成功するかどうかなんて、運次第だから、たくさんチャレンジするしかない。サイコロで当たりを出すのに一番効果的な方法は、たくさんの回数、サイコロを振ることだけだからだ。

引用元:
ふろむだ『人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ダイヤモンド社・2018)p.92

 

自分に才能があるかないか? を悩む時間があったら、その時間を、単純に、試行回数を増やすのに投資したほうが、はるかに成功確率が高くなる。

引用元:
ふろむだ『人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ダイヤモンド社・2018)p.100

 

 

私はチャレンジする前にどうしても怖気づいてしまうタイプなので、自戒を込めて引用しました。

「あーでもないこーでもない」と考えていても、結局のところやってみないとわからないのですよね。

「かなり綿密にシミュレーションしたぞ!」と思っても、やってみたら全然違ったりするし。
「自分にはこれしかない!」と覚悟を持って始めたことなのに「なんかつまらない…」ということもあるし。

一方で、「まー、遊びと思ってやってみよ」くらいの軽いノリで始めたことの方が、続いたりする。

いろいろ試しているうちに、たまたまうまくいったことがあれば、それを足がかりにして、次の成果につなげよう、ということです。


コントロール欲

人間の三大欲求よりもはるかに強いのがコントロール欲である、ということには驚きました。

・人間は、コントロールしたいという、強い欲求を持っている。
・コントロールできると、より幸せで、健康で、活動的になる。

引用元:
ふろむだ『人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ダイヤモンド社・2018)p.128

 

個人的にすごくわかるなあ、と思ってしまいました。

以前、会社員をしていたのですが、特殊な職種だったこともあって自由度が少なく、息が詰まって仕方がありませんでした。

会社は利益を生み出さねばならないところですから、効率を求めるのは理解できますし、お金をいただく以上は仕方ないのですけど。


また、過干渉型の毒親も「コントロール欲の権化」ですよね。
子どもをコントロールしたいということは、自分をとりまく環境をコントロールしたいってことですし。
その毒親も、成長過程で誰かにコントロールされてきたのでしょう。

コントロールされてきた人は、その分、コントロール欲が強くなる気がしています。
私自身もそうです。
抑圧してきたものを一層求めてしまう、みたいな。
コントロール欲って、それほどまでに強いものなんだなー、と改めて思いました。


少し脱線してしまいましたが、戻りまして。

このコントロール欲の強さがあるからこそ我々は「成功するか否かはコントロールできる」と思い込んでしまう。

これは結局、「成功は運によるところが大きい」という現実から目を逸らすことになるので、さらに成功確率が下がる。


著者によれば、「運」自体はコントロール不可能ですが、「運の運用」はコントロール可能だといいます。

だから、「運の運用」のほうを頑張るしかないのですね。

 

錯覚資産を増やすには

詳しいことは本書に任せるとして、錯覚資産を増やす一つのやり方としては、

実績をつくる × 多くの人が自分のことを思い浮かぶ

といった状態にすること。

こうしておくと
チャンスがやってくる→実績→ハロー効果など増→またチャンスがくる…
といった良いループができるのだそうです。


人間は、直感を正しいと思い込んでしまうところがある。
だから、パッと思い浮かんだものを過大評価する。

ということは、自分のことをパッと思い浮べてもらえばもらうほど、チャンスが広がる、というわけ。
そのためには勉強会に出たり、友人知人と食事をしたり、ということも大事。

 内向的な人は、これの威力を甘く見ていることが多く、非常に多くのチャンスを逃してしまっている。

引用元:ふろむだ『人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ダイヤモンド社・2018)p.221


痛いところをつかれました。

飲み会なども苦手だし、人と会うと結構疲れてしまうので、集まりごとにはあまり顔を出さない派の私。


一方で、チャンスは人によってもたらされる、ということも実体験しています。
現在の仕事は知人からたまたま声をかけてもらったのがきっかけで始めたからです。
何の意図もなく、世間話として「こんなこと勉強しているんですよー」とポロッと言ったことを先方が覚えてくださっていたのです。


こうして振り返ると、運によるところが大きいということも、思い浮かべてもらうことが大事、ということも納得だなあと思います。

とはいえ、無理して社交的になっても、疲れなどで総合的にマイナスになったら意味がないので、塩梅が難しいですが。

 

おわりに

「錯覚資産」というのはおそらく著者さんの造語ではないかと思うのですが(違っていたらすみません)、このネーミングがそもそもうまいなーと思いました。

もともと心理学でいうところの「認知バイアス」の一部をうまく言い換えていますよね。


それから、本の表紙にある「え?まだ実力で勝負とか言ってるの?」というコメントがやはり目を引きます。

おそらく誰しも心のどこかに「実力主義っていうけど本当なの?(あの子が評価されているのは美人だからじゃないの? あいつが評価されているのは上司に気に入られているからでは?)」という思いを抱えているからではないかと思います。

そういった明るみに出せないモヤモヤに対し、この本はダイレクトに訴求しているのでしょう。


言語化できない、どころか、無意識のうちに押しやっているアレコレを、一つひとつ取り出して、「これはこういうしくみ」とわかりやすく解説してくれるので、おもしろかったです。

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている | ふろむだ 著 | 書籍 | ダイヤモンド社