自己肯定感が低いと、何をやってもうまくいかない、というのはよく聞く話です。
本を読んでいても、そのような内容を本当によく見かけます。
じゃあ自己肯定感を上げよう、となるのですが、具体的にどうしたらよいのか、よくわからなかったりしますよね。
そもそも自己肯定感って、ベースには親子関係のよしあしが絡んでいますから、そう簡単に上げられるものでもないと思うのですよね。
いろんな本を読んで、自己肯定感の上げ方について多少つかめてきた感はあるのですが、まだきっちりと言語化できるほどでもない。
というわけで、読んでみました。
玉井仁『自分に「いいね!」ができるようになる本』清流出版(2017)
どんな本?
どうすれば自分に対して「いいね」と思えるか、嫌なことがあっても大丈夫と思えるか、ということを考える本です。
自分に「いいね」と思う、ということは、言い換えると自分を大切にする、ということでもあります。
つまり、自分の心が求めているものを自分でうまく届ける方法について、解説した本、ともいえるでしょうか。
ところどころマンガで描かれているので、活字に苦手意識がある人や、心理学的な本を読むのは初めて、という人をメインターゲットにしているのかな、と思います。
文字も比較的大きめで、軽く読める感じです。
心のクセを把握し、改善する
本書では、自分に「いいね」ができない女性が3人登場します。
・自分にダメ出しするタイプの優香さん
・気を遣いすぎて自分の思ったことが言えず疲れてしまうタイプの美羽さん
・思い通りにならないことに対して怒ってしまうタイプの陽子さん
最終的に取り組む対策はそれぞれ異なりますが、共通の原因としては
心のクセ
があるということ。
子供の頃に自然に身につけ、繰り返されることで磨き上げられてきた考え方や行動のパターンから自由になれていない
玉井仁『自分に「いいね!」ができるようになる本』清流出版(2017)P.64
心のクセは、苦しいときなどに特に出てきますので、悪循環にはまるわけです。
この心のクセを見つめて改善していく、ということが大事、と著者はいいます。
具体的なプロセスとしては
困った状況を確認
↓
状況を振り返りつつ整理
↓
心のクセを確認
↓
具体的に取り組むことを決める
心のクセについて、ある程度自覚がある人もいるでしょうが、「なんだかわからないけどモヤモヤする」という方は焦らずに状況を把握する必要がありそうです。
ここはけっこう肝だと思います。
本書を読みながら、付属のワークシートに書いていくことで、明確にできるようになっています。
ちなみに、先の登場人物の心のクセは
ダメ出しタイプの優花さん:完璧主義・白黒思考
気を遣いすぎる美羽さん:過度の予測
思い通りにしたがる陽子さん:べき思考
でした。
どれもよくあるパターンですよね。
私自身も全て身に覚えがあります。
感じたことをそのままよしとする
こういった心のクセを脱するには、「感じたことをそのままでよしとする」「頭で考えすぎない」といったことがポイントになってきます。
感じたことを思考で抑えると「自分を大切にする」から離れる、と著者はいいます。
自分を大切にすることは、自分に対して「いいね」と思うことにつながりますから、「そのままでよし」は「いいね」にもつながっているわけですね。
本書に限らず、「感情を大切にする」「ただありのままでよしとする」という内容は、いろんな本に書かれていました。
でも、正直、私はあまりよく分かっていなかったと思います。
とくに「ありのままでよし」だなんて、自罰思考の強い人間からすると「いやいやいや、ありのままじゃダメでしょ(ありのままじゃ、私は周り(元は親)に受け入れられなかったんだから)」が強いので、簡単には受け入れられませんでした。
頭では理解していたけれど、体感として分かっていなかった、という感じです。
でも、最近やっと(体感としても)分かってきた気がするのです。
本書でも
感情はその人の心の状態を教えてくれる指標です。
玉井仁『自分に「いいね!」ができるようになる本』清流出版(2017)P.70
とあるように、
感情って、自分の置かれている状況について教えてくれているだけなのです。
「情報」ですね。
もしかしたら「おなかが痛い」とか「頭が痛い」と同種のもの、と捉えてもいいのかもしれないなぁ、と個人的には思うのです。
そう考えると、感情を思考でねじ伏せることって、「おなかが痛い」に対して「それでも健康のことを考えて肉を食べなければならない」と無理強いしているようなもの、かもしれません。
おなかが痛いときに消化の悪いものを食べたら余計悪化しますよね。
感情も同じなのではないか?、と思うようになりました。
「おなかが痛い」「頭が痛い」なら、それ相応の対処が必要ですものね。
心も同じで「不快」「つらい」「悲しい」なら、それ相応の対処(自分を労わるなど)をしてもよいではないでしょうか。
ただ、人間関係の中で感じる「不快」の場合は、相手がいますから、「対処」にもある程度の制限が伴うかもしれないし、配慮も必要になってくるのだろうと思いますが。
そこさえ気をつければ(気をつけすぎるとこれまた問題ですが)、自分の気持ちを大事にしてよいのではないかと思うのです。
嫌いな人やものがあるのは自然なこと
先述の「感じたことはそのままでよし」に関連しますが、著者によれば、嫌いな人やものがあるのは自然なこと、といいます。
嫌いな人についても、嫌いな食べ物と同じように考えてみるとよいそうです。
嫌いな食べ物が出された場合、公式な場では我慢して食べたり、なんとかわからないように端によけたりすることもあるかもしれません。
親しい仲間との食事であれば「これ苦手なんだ」と素直に打ち明けて「食べない」という選択も可能なわけです。
嫌いな人も嫌いな食べ物と同様に、状況に応じてうまく距離をとればよい、とのこと。
嫌いな人やものとは、上手に線を引いて適切に距離を取るスキルを持つことは大切です。嫌なことに対して線をひくこと、できるだけネガティブな感情に引きずられないように、上手に断ることは、大切なスキルです。また、逆の立場で相手に「うまく線を引かれておく」ことも、あわせて大切なスキルなのです。
玉井仁『自分に「いいね!」ができるようになる本』清流出版(2017)P.167
私はずっと、これができていませんでした。
「嫌いな人とも仲良くせねばならない」と思いこんでいて、わざわざ嫌いな人に近づいていくようなこともありました。
近づきながら「うう、やっぱこの人苦手だ」なんて思っているので、相手も察するものがあったでしょうし、お互い不幸でしたね。
ただ、組織や集団においては「徹底的に避ける」と、それはそれで不穏な空気が漂いますから、バランスが難しいのですけどね。
まぁ、「嫌いな人やものがあってもいい」と思えるだけで、ずいぶん心が解放されますよね。
迷ったら、嫌いな食べ物に置き換えて考えてみよう。
おわりに
「自分の感情を大切にする」についてもっと詳しく知りたい方は、石原加受子さんの提唱している「自分中心心理学」がおすすめ。
(過去記事)
広告