気に入られたいがために自分を偽ってしまう
両親不仲、家庭内不穏、親は否定ばかりしてくる。
「ああ私は(精神的に)ひとりぼっちだ」
「私が困難に遭っても誰も助けてくれないだろう」
と深刻に悩んできました。
「いざというときに力になってくれる人」や「いかなる自分をも受け入れてくれる場所」を探し求めて、あっちこっちさまよっているような面もありました。
しかし、異常なほど気を遣ってしまって自分が勝手に潰れたり、相手に迎合しまくってナメられたりするので、かえって「私の居場所はこの世にないのか」という絶望を強めていたように思います。
当然、継続的な人間関係もなかなか築けませんでした。
そんな人は、どうしたらいいのでしょうか。
加藤諦三氏の『「自分の居場所」をつくる心理学』PHP研究所(1989)を参考に生き方を考えていきます。
(※こちらは新版です。本記事引用箇所に記載したページ数は第一版のため新版とは対応しておりません。あしからず)
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孤独でしかたがないからこそ
前回の記事(「自分が一番」でないと気がすまない理由とその落とし穴 )で述べたように、「自分が一番でないと気が済まない」という自己中心性は、小さいころに愛されないほど深刻になります。
「愛されない」は、虐待やネグレクトといったひどいものに限らず、「親にとって都合のよいことをしたときのみ存在を認められた」なども一例です。
その結果、心の底にへばりついているのは「孤独感」。
つまり、
孤独で仕方がないからこそ、他人から関心を持ってもらいたくてたまらない(居場所がほしい)わけですね。
居場所のつくりかた
称賛を得ようとせずにまずは抑圧をとる
居場所を求めてしまう人は、どうしたらいいかというと。
まず「周囲から称賛を得ようとするのをやめる」。
称賛を得ようとするのではなくて、心理的弱点を治そう、と著者はいいます。
心理的弱点を治すとは、具体的にどういうことかというと、
小さい頃の悲しい感情を一つずつ取り出して、味わう
というプロセスが大事だと著者はいいます。
愛されなかった人は、感情を殺さないと生きてこられなかったわけです。
たとえば、「悲しい」「泣きたい」ときでも、「いや、親は自分のためにあえて厳しくしたのだ」とか「これくらいどこの家庭でも普通のことだ」とか「ここで泣いたら余計に怒られる」などと抑圧してきたわけです。
けれども、「悲しい」を抑圧していると、他の感情「嬉しい」「楽しい」なども感じにくくなります。
人生を楽しむ力が全体的に落ちてしまっているわけですね。
だからこそ、小さい頃のことを一つずつ「ああ、あれは悲しかったな」「惨めな思いをしたな」と味わい直すことが必要なのだそう。
「親に合わせて嫌いなフリをしていたけれど、実はコレが好きだったな」なんてことを地道にやっていく。
そこに「実際の自分」がある、と著者はいいます。
本来の感情を取り戻せば、何に対して「楽しい」や「嬉しい」と思うか、徐々にわかっきて、自分の輪郭が見えてくる。
そうして、「楽しい」「嬉しい」と感じることを意識的に取り入れるようにする。
もちろん、いきなり全解決するわけではないですが、多少なりとも日常がマシになってくる。
それを積み重ねて、じわじわ人生が良くなっていくわけです。
以下、厳しいですが、端的にまとめると
結局自分の実際の感情を味わうことなく、他人に見せる自分を取り繕うことに専念してきたのである。どうすれば他者の好意を得られるかということばかりに専念して、実際の自分の感情を無視してきた。それが防衛的性格である。
加藤諦三『自分の居場所をつくる心理学』PHP研究所(1989)P.164
グサァっ。
自我が確立して自分は何者であるかが分かってくると、人から居場所を与えられなくても自分で自分の居場所を作れる。
加藤諦三『自分の居場所をつくる心理学』PHP研究所(1989)P.155
結局、「自分を助けてくれる何か」があるのではなくて、「自分で自分の居場所をつくる」のが答えなんですね。
特別な方法を期待していると「なあんだ」とガッカリされたかもしれません。
私自身も、なかなかピンとこなかったです。
けれど、10年くらい経ち、「結局自己確立しかないんだわ」と思うようになりました。
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人のために何かをするのではなくて、自分がしたいからそれをする
本書で提案されていたのは「一人で楽しめるもの」をまずは探す、ということ。
楽器でもいいし、読書でもいいし、服が好きならおしゃれして出かけるでもよし。
「楽しめるもの」と聞くと「ものすごく楽しいものでなければ!」と気合いが入ってしまいますが、最初からそこを求めるのは難しいので、「ちょっと気分が上がるかな」くらいのものから始める。
人のために何かをするのではなく、自分がしたいから自分がする、ただそれだけのことで何かをする。
加藤諦三『自分の居場所をつくる心理学』PHP研究所(1989)P.214
私自身も、「プロになれるでもないのにやってもムダ」とずっと思ってきた趣味の習い事を始めたり、「一人で行ってもむなしいだけ」と思っていた一人旅を楽しんだり、親にどう思われるか気になって着られなかったような、変わったデザインの服を着るようになりました。
すると、(”大きな幸せ”ではなくとも)常に「ちょっと満足している」ので、心が安定するようになってきました。
それを何年か続けた今、本来の自分にかなり近づいてきた実感があり、心が穏やかです。
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まとめ
・小さいころに「悲しい」感情を抑圧すると悲しみだけでなく「嬉しい」「楽しい」などの感情も鈍ってしまい、人生を楽しむ力が落ちる
→子どもの頃に抑圧した感情を取り出して「あれは悲しかったな」と感じ直す
→抑圧がとれると「実はこれが好きだった」なども思い出してくる
→ささいなことでよいので日常に「嬉しい」「楽しい」を取り入れていく
⬇
自我が確立→居場所を求める必要がなくなる