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「自分が一番」でないと気がすまない理由とその落とし穴 |感想『「自分の居場所」をつくる心理学』

なぜ大人になっても「自分が一番」でないと気が済まないのか

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家庭で威張りまくっている夫とか、部下が自分にヘコヘコしないと不機嫌になる上司とか、知らない話題が出ると途端に不機嫌になる人とか。

お恥ずかしながら私自身も若い頃、何かしらのコミュニティ内で自分よりも大切にされている(ように見える)人がいると「あの子ばかり大事にされてずるい(=私のことも大事にしてくれ)」と思ったことがあります(反省)。

なぜいい大人が、こんなにも満たされない気持ちでいっぱいなのか。

加藤諦三氏の『「自分の居場所」をつくる心理学』PHP研究所(1989)を参考に考えていきます。

 

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幼少期の傷を抱えている

小さい子供は基本的には「自分が一番」ですよね。
母親が自分にかまってくれないとムクれたり、駄々をこねたりします。

このとき母親が面倒がらずに子供の相手をしたり、愛情を注ぐことができれば、「自分が一番でないと嫌」は、成長とともになくなっていきます。

しかしながら、母親から適切に相手をしてもらえなかった場合、心理的な成長が止まってしまうので、大人になってもなお「自分が一番でないと気が済まない」という状態に留まってしまいます。

自分にだけはいつも何か特別なものが用意されていることを要求するのが神経症的要求の特徴である。

加藤諦三『自分の居場所をつくる心理学』PHP研究所(1989)P.106

 

本心をいえば「ちやほやしてくれ」「俺を一番に扱ってくれ」と思っているのですが、年齢的にはいい大人なのでそんなことを言うのはおかしいとわかっている。

だから、「誰のおかげで飯が食えると思っているんだ」とか「俺は一家の大黒柱だぞ」など、「それっぽいこと」に形を変えているわけなんですね。

「自分は特別」と思っていると地道な努力ができない

しかし、このような「自分は特別」意識を持っていると、「自分は特別」だからこそ、他人と同じような地道な努力ができない、と著者はいいます。

自分の人生にだけは特別な恩寵が授けられていると心密かに期待する人は社会的に挫折する。そしてやがて自分の人生の無意味感に苦しむことになる。

加藤諦三『自分の居場所をつくる心理学』PHP研究所(1989)P.111

 

こ、これは耳が痛い。

かつての私も、「才能でほぼ決まるんだから、努力とかムダ」と思っていた時期があります。

ですが、いくら才能があったところで、上には上がいるもの。

天才でない限り、多かれ少なかれ地道な努力はどこかで必要になってくるものです(むしろ天才こそ、夢中になるがあまり自然と努力していたりする)。

けれど当時の私にとっては、努力すること、それ自体が癪だったんです。
自分は特別なはずだから、と。
「努力しないと得られないのだったら、いいや、いらない」とまで思っていたふしがあります(汗)

当然ながら、待っていたのは挫折でした。

そうして努力の重要性を思い知ってもなお、心のどこかで「何か良いことが巡ってはこないだろうか」「何か眠っている才能があるのではないか」といった「棚ぼた」を期待しているようなふしがありました。

「自分は特別」と思っていれば、「特別ゆえの好機」がくるのをただ待っていればいい、ということになりますから、一見そっちのほうがラクに感じるんですよね。

しかし現実として、「棚ぼた」は滅多にあるものではありません。
ただ手を広げて待っていただけで、実際には何もしていない。
失敗を避けたつもりでいて、何も行動しなかった、そのことによって結局失敗しているんですよ。

仮に、運よくチャンスがやってきたとしても、日頃何も積み上げていないので、実力不足でそのチャンスをうまく活用できないんですよね。

それにも関わらず、神経症の人(かつての私自身も含め)は「おかしい!(自分は特別なはずなのに!)」と納得できない。

そうやって期待と絶望を繰り返すうちに、人生の無意味感が顔をのぞかせるようになる、というのは私自身も身に覚えがあり、今は反省しています。

といっても、「自分は特別」と思い込まないと生きてこれないほどに傷ついていたのですから、それ自体は仕方がないことでもある……。

具体的にどうしたらいいのか、次の記事で考えていきます。

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ここまでのまとめ

・大人になっても「自分が一番」でないと気が済まない人は幼少期の傷を抱えている
 →孤独で仕方がないからこそかまってもらいたくてたまらない

・「自分は特別」と思っていると地道な努力ができず人生がいきづまりやすい

参考文献

(※本記事引用箇所に記載したページ数は第一版のものであるため、上記新版とは対応しておりません)