大人になってからはあまりマンガを読む機会もなかったのですが。
第一話を試し読みしてみたら、もう、主人公のことが他人事とは思えず、購入してしまいました。
カレー沢薫、ドネリー美咲(原案)『ひとりでしにたい(1)』
読みたい熱が高まっているときにすぐに購入できるのは電子書籍の強みですね。
どんな本?
マンガなので、わざわざ言葉で説明するのもアレかとは思いますが。
ひとことで言ってしまうと、
「主人公の女性(35歳・独身)が、親戚の伯母さんの孤独死をきっかけに、これからの生き方(死に方)を考える」というお話。
(現時点では1巻までしか出版されていないので、いまのところ、ですが)
孤独死した伯母さんは、バリバリ働いてきたキャリアウーマン(独身)、おしゃれで素敵で、主人公にとっては「こんなふうになりたい」という女性でした。
しかし、歳をとっていくにつれ、卑屈で愚痴っぽいおばあさんになり、親戚とも疎遠になり、孤立。
からの孤独死(@風呂)。
「なんでこうなってしまったんだ……」と問わざるを得ない主人公。
同僚を巻き込みながら、「ひとりで死ぬこと」について考えていく、といった感じかと思います。
壮大なテーマですが、あちこちに笑える要素があり、第一の感想としては「おもしろい!」でした。
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感想
設定自体が身につまされる
私の伯母(健在)も、独身でバリバリ働いてきた人。
若い頃はおしゃれで、前向きで、家事も得意。
10年くらい続いた、寝たきり祖母の介護すら、働きながら軽々とこなしたほどの人。
でも。
ここ数年、老化やストレスの影響もあってか、ずいぶん性格が変わってしまったように思います。
以前は私の話もわりと聞いてくれる人でした(私の母は人の話を聞けない人ので、私にとって伯母は貴重な存在だった)が、そういう余裕もなくなってしまいました。
話を聞くどころか、ことあるごとに私のことを批判してくるように。
「結婚せえ」「子供を生め」「もっと働け」「金をだせ」「イトコの〇〇ちゃんは結婚したのに/どこそこに勤めているのに」「もっと良い(=伯母の趣味の)服を着ろ」etc
(総括すると「(伯母にとって)思い通りの人間になれ」と言いたい模様)
母にされて一番嫌だったことを、信頼していた伯母にされるのはこたえます。
一度や二度言われる程度ならかまいませんが、電話の度に聞かされるともう、こちらもつらい。
あとはお金の問題。
伯母は現役時代と同じお金の遣い方をするので、いつもお金が足りず、「貸してくれ」と。
収支と支出が合っていないことを伝えても、頭では理解しているのでしょうが、行動を変えることができないのです。
老化という現象を考えると、優しくすべきなのだろうと思うのですが、ただでさえ自分のことで精一杯の私にはとても抱えきれず、最近はほとんど連絡をとっていません。
伯母と連絡を取るのは自分がグッタリして(仕事に影響するので)できない、けれども、「ここまで懸命に生きてきた人なのに……」と不憫には思う。
このあたりの心境が、マンガ中の主人公と似たところがあり、一気に引き込まれてしまいました。
また、私自身も、子を持つ気がなく、社交的でもないので、バリバリの「孤独死予備軍」。
決して他人事ではありません。
私は「孤独死」自体は気にならないと思っているのですが(人が不憫に思おうと、自分は死んでいるのでわからないし)、発見が遅れることによって、人に迷惑をかけるのは極力避けたい。
「最適な死に方」を学ぶつもりで読み進めました。
ゾッとしたところ
さて、マンガの話に戻りまして。
大企業に勤めていたため、ある程度の財産はあるはずだった、主人公の伯母さん。
しかし、買い物依存、投資、宗教などに手を出していたようで、財産はゼロ。
そのことに対し主人公は「伯母さんそんなに頭悪かった?」と思い、そして気づきます。
いや……若い頃
「自由」だと思って
いたものは
年をとると
「孤独」と「不安」に
なって
孤独と不安は
人間を「馬鹿」にして
しまうんだ
P.49
こわいこわいこわい。
私もまさに「自由」を重んじているタイプで。
長年、親に支配されてきたため、現在はその反動で「自由サイコ―!!!」となっていますが。
これが年齢を重ねたとき、どうなるかというと……正直怖い気持ちもあります。
かといって、孤独にならないように子供を持てばいいのか、というと、それも違いますよね。
子には子の人生がありますし。
私のように実母と疎遠にならざるを得ないケースもありますし。
で、主人公はこう思います。
ひとりで生きようと
するのは 間違い
じゃない
伯母さんは 別の
ところで間違えたんだ
ひとりの
人ほど
「人」を大事にしないとダメ
なんだ
P.51
うわー、グッサリきますね。
私はあまり寛容なタイプではないので、つい他人の短所(というか、実際は短所ではなくて、単に自分と合わないだけの事柄)に目がいってしまいます。
自分だって「難」なところは山ほどあるくせに、他人に対して「あの人はああいうところがあるからなあ(あまり親しくするのもなあ)」と思いがち。
もちろん、相手に悪意があるとか、恣意的に傷つけてくるという場合は距離をとるのが正解なんですが。
それ以外の、あまりにも小さなことで逐一動揺していると、それこそ人との関わりが無になってしまうわけで。
自分についても、他人についても、なるべく「いいところ」に目を向ける、あるいは「いいほう」に解釈するとか、そういう心がけが今のうちから必要なのかもしれない、と思いました。
ただし!
人を当てにしすぎてもダメ。
相手には相手の事情がありますからね。
というわけで、主人公は
人との縁を大事に
しつつ 自分でできる
ことをやる
P.52
と考えるのでした(第2話)。
これほんと同意!
ただ、これもバランスが大事でして。
自分で抱え込みすぎるのもNGで、SOSを出すことの大切さも第3話で触れられています。
あまりネタバレになるのもアレなので、以降はポイントだけ(自分用備忘録)。
・情報はアップデートしつづける
(古い価値観を若い人に押し付けない)
・人生に楽しみは必要
(これがなくなると生きる意欲低下→孤独死へ)
・老後破産しないために現状把握
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おわりに
取り扱っている内容としては、描き方によってはどんよりしてしまいそうなものですが、ギャグテイスト(という表現でいいのかな?)が盛り込まれていて、とても楽しく読めました。
すでに2巻が待ち遠しい。
ちなみに、私のお気に入りキャラは、第六話で登場する高校の同級生の男。
意識高い系というかなんというか、「ああ、こういう人いるいる」というのが誇張的に表現されていて、思わず笑ってしまいました。
あと、猫の絵がかわいい。
私はどちらかといえば犬派なのですが、マンガに登場する猫はゆるキャラっぽくて好み。
カレー沢薫氏は、マンガ以外にもコラムを書いておられるようで、書籍を見かけたことがあり、そのときは「ずいぶん変わったペンネームだな」と思っただけだったのですが、これを機にいろいろ読んでみたくなりました。