親の呪いを解いて自分の人生を生きる

10年かかったけどなんとか回復してきた

息子よりも「母と娘の関係」がこじれがちなのはなぜ?- (1)同性の先輩ゆえの上から目線|『母が重くてたまらない』より

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「母 vs 息子」の構図は少なめ?

私自身や周囲の親子関係を見回してみると、「母 vs 娘」「父 vs 息子」つまり、同性同士の対立の例は非常によくあるのですが、「母 vs 息子」(あるいは「父 vs 娘」)の異性間の対立構図は比較的少ないような気がします(※ あくまで少ない感じがするだけで、母対息子の例ももちろん存在します)

たとえば、知人男性の例で、「この人、抑圧されてきたっぽいな」と思う人がいるのですが、少し話してみると、やはり親御さんに対してなかなか思うところがあるようでした。

それで、「わかるわかるー、うちの母もさ……」みたいな展開になると「あ、でも俺は、母親にはよくしてもらったから(君とは違うよ。キリッ)」という感じなんですよ。

全体的な体感として「男性ってお母さん好きな傾向あるよな」と思います。
私の父も、祖父とはほぼ絶縁状態でしたが、祖母に対しては「思慕」の感情があったようでしたし。

その一方で、娘サイドからは、「うちのお母さんはお兄ちゃん(or 弟)ばかりかわいがった(怒)」等はとてもよく聞きますし、「母に対するのっぴきならない感情」を持っている女性はとても多いと感じます。

なぜ、同性の親子関係、特に母と娘は、こじれがちなのでしょうか。

『母が重くてたまらない』という本では、母 - 息子関係と、母 - 娘関係の違いを三点挙げており、そこからヒントがつかめそうです。

 

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同性ゆえの「同化」

一つ目は、娘は母と同性であることだ。娘の結婚は母との関係を疎外するどころか、女の人生の先達である母の地位を高めることになる。

信田さよ子『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』春秋社(2008)p.47


母からすると、娘は子であると同時に、「同性の後輩」でもある。
だからこそ母側は、つい自分のときと比較してしまうのでしょうね。

しかし、「母が娘だった頃(数十年前)の時代背景を前提にした上で」の比較なんですよ。

数歳年上の先輩であれば、「うちらのときはさ~」と言われてもそこまで変化はありませんが、母となると、20~30年、人によっては40年くらい先輩なので、「社会背景が変わりすぎていて比較できないレベル」なのですよね、本当は。

なのに、年齢を重ねると「十年前なんてついこの間」みたいな感覚になってしまうのか、「お母さんが若いときはこうした(からあんたもそうすべき)」みたいな圧をかけてくる。

私の母のケースだと「男と対等に渡り合おうなんて無理があるのよ」「女のくせにアンタはハッキリ言いすぎ」「女の子なんだから〇〇」とか、「女性を下に見る文化」でことあるごとに私を押さえつけてきましたね。

その一方で、男児の場合は、おおむね「まあ、男の子だからね」で済まされることが多かったような気がします。むしろ「男の子はやんちゃなくらいがいい」とまで言われていましたから。
→私が子どもだった時代のころの話なので、令和の子育てにおいては変化しているとは思いますが

つまり、息子の場合は、母からしたら理解しがたいことでも「まあ、男の子だからね(性別が違うのだから理解できないところがあって当然)」で処理できた部分もあったのではないかと思うのです。
外国人観光客が日本でのマナーを守れなくても「まあ、外国の人だからね」と思えるのと同じですかね。

しかし、娘に対しては「性別が同じだし血もつながっているのだから基本性質は同じはず」と思い込んでしまって、「(自分と同じなのだから)こうすべき!!」と強い圧で押し付けることになるんですよね。

娘が母と同じやり方を採択することで「私(母)のやり方・人生は正しかった」と確認したい面もあるのでしょう。

さらに、娘が結婚し、子を産めば、なんだかんだと母を頼らざるを得ない場面が出てくるでしょう。

娘を手助けしたり、アドバイスするごとに「ほらごらんなさい、お母さんは何でも知っているんだから」となり、母が力を持っていきそうです。

上で引用したように、娘の結婚は「女の人生の先達である母の地位を高めることになる」わけですね。

同性ゆえの上から目線は父息子関係でもある

同性だからこその同化、それによるこじれついては、男女逆にしても同じ現象がありますね。

父の視点から考えてみると、娘のことが不可解でも「まあ、女の子だからなぁ」「女性は難しいからなあ」的に、線を引ける部分もあるのでしょう。

逆に、息子に対しては自分(父)と同化したり、張り合ったりする。

先に紹介した男性の例だと「俺がお前の年齢のころは、もうお前生まれてたぞ(=俺に比べてお前は遅れている)」と言われると怒っていましたね。

ただ、ある程度の年齢になると、息子は父を頼る機会はほぼなくなるわけで、そこは、妊娠出産子育てを通して、母を頼る機会が多くなる娘サイドと少し事情が違うのかもしれません。

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まとめ

母と息子(父と娘)関係よりも、母と娘(父と息子)関係のほうがこじれやすいのは、同性であるがゆえ、親側が子を自分と同化・干渉してしまうことが一因ということでした。

結局のところ、同性間であれ、異性間であれ、親子関係がこじれる理由の一要素は「(心理的な)距離が近すぎる」ということなのだろうな、と思いました。

子を「別の一人の人間」として見なせなかったということなんですよね。

個人差はあれど、日本という社会自体が「個よりも家」の文化でしたから、ある意味仕方がなかったことなのかもしれません。

次の記事では、母娘関係がこじれがちな理由2つ目について考えていきます。

息子は強くなって母を守るという構図になるのに対し、娘は母よりも弱者であることで母を支えるという構図の違いについて。

>>>母息子関係よりも母娘関係がこじれがちな理由を考える➁ - 息子のことは見上げるのに、娘には罪悪感を植え付けてコントロールする 

 

参考文献

母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き

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