何か嫌なことを言われたりされたりしたときに「言い返す」。
これがもう、本当に苦手で苦手で。
例えば母に対して。
基本的に私を思い通りに操ることしか考えていない人。
私が母の要求を拒否すると、狂ったように怒り続けるので、言い返すなんて火に油を注ぐようなものでした。
父は父で「自分が世界一正しい」と思っているふしがあり、高圧的で、言い返すのはとても難しいことでした。
(理屈を通して一生懸命説明すれば、聞く耳は持ってくれたので、まだ助かったのですが)
あるいは同級生や同僚。
ちょっとバカにされているな、と思うときでも、言い返したらますます状況が悪化しそうというか、言い訳がましく聞こえるのではないか、と思ったりして口ごもってしまっていました。
最近は、苦手な人から離れるということを徹底しているので、口撃されることもほとんどなくなりましたが、「あのとき、どうすればよかったのだろう」という思いから、読んでみました。
ゆうきゆう『やられっぱなしで終わらせない!ことばのゲリラ反撃術』すばる舎(2012)Kindle版
どんな本?
何か嫌なことを言われたとき、ただ耐えるよりも、ひと言だけ言い返す、というのが心理学的にはもっともストレスが少ないそうです。
どのようにして「ちょっとの反撃」をするか、について書かれた本です。
著者は精神科医師のゆうきゆう氏。
ものすごい大量の著作があるので、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
「言い返す」を封印すると「弱者」に
私、「言い返す」ってすごく悪いことだと思いこんでいました。
なんとなく、相手を痛めつけるようなイメージだったのです。
言ってきた相手にも問題があるかもしれないのに「向こうは悪気はないのだろうから、ここはこちらが大人になろう」と我慢することが多かったです。
しかし、言い返さない、抵抗しないままでいると、自ら「弱者」になりにいくようなものらしいです。
我慢し続けるあなたの行動が余計にあなたの首を締めている、周囲の評価を落とす原因となっている
ゆうきゆう『やられっぱなしで終わらせない!ことばのゲリラ反撃術』すばる舎(2012)Kindle版 位置No.112
抵抗しないままでいると、「周りに魅力的に思われなくなってしまう」
ゆうきゆう『やられっぱなしで終わらせない!ことばのゲリラ反撃術』すばる舎(2012)Kindle版 位置No.143
悪口を言われても無抵抗でいると、周囲は「あの人は本当に劣っているからこそ悪口を言われるのだ」と思うようになってしまうのだそうです。
なんとおそろしいことでしょう!
私としては、相手を慮ったつもりだったのですが。
状況を悪化させたくなくて、のことだったのですが。
むしろ、自分の首を締めている、評価を落としている、だなんて。
専門的な解説は本書にまかせますが、「弱者」にならないためには「ちょっとだけ反撃」が大事になるそうです。
そういえば。これを書いていて思い出したのですが。
以前の職場で、わりと日常的に皮肉っぽく攻撃してくる先輩がいました。
皮肉なので「あれ? 今バカにされた? そうでもない? どっち?」と戸惑うケースが多く、ひたすら我慢していました。
でもあるとき、あまりにも腹が立って、(具体的に何と言ったかは忘れたのですが)短い一言だけですが、毅然と言い返したことがあります。
そしたらそれ以降、サッパリ言われなくなりました。
(たまたま近くにいた後輩が「さっき言い返したの、良かったですよ」とも言ってくれました)
「ちょっと反撃」の効果は確かにありましたね。
ただ、そうは言っても……反撃って、難しいですよね。
何か嫌なことを言われたりしたときって、悲しかったり、ショックを受けたり、恐怖だったりで、思考が疎かになったりしまいますし。
となると、この「相手にのまれる」という状況をまず脱しないといけないわけです。
動揺を悟らせない
それがネガティブなものであっても、「なにかしらの反応がある」のは相手にとって喜びなのだそうです。
だからこそ、攻撃されても落ち着いて深呼吸。
背筋をのばして目線は少し上にして、ゆっくりしゃべる。
これが「ちょっと反撃」の基本体勢。
とにかく相手に「いじってもつまらない」と思わせることが大事なのですね。
そもそもなぜ相手の言葉に動揺してしまうかというと、
あなた自身が、相手の発言を真実として受け入れているから
ゆうきゆう『やられっぱなしで終わらせない!ことばのゲリラ反撃術』すばる舎(2012)Kindle版 位置No.410
そうなんですよ。
日頃から自己否定感が強いと、他の人からバカにされても「やっぱそうなんだ」と思ってしまうんですよね。
でも、よく考えてみると……
相手がもし、人格の整った人であれば、不当に攻撃してくることはまずありませんよね(本当にこちらに問題がある場合は、攻撃という形ではなく、必要事項のみをはっきり伝えてくれますし、フォローも忘れない)。
不当に攻撃してくるような(問題のある)人の言葉を鵜呑みにするのって、ある意味危険なことだなぁ、と思いました。
自ら罠にかかりにいくというか。
自己嫌悪の蟻地獄に足を踏み入れるというか。
とはいえ、子供の頃から不当に攻撃してくる人に囲まれていると、それが当たり前になってしまって、異常さに気づきにくいのですが。
運良く気づけたら、修正、ですね。
相手にのまれない方法として使えそうだと思ったのは、「小さな勝利」を感じるというやり方。
例えば、攻撃してきた相手に対し「この人、お腹出てるな……お腹の引き締まり具合は自分の勝ち」と思うとか。
「こんなに上から目線ってことは、この人実は自信ないんだな」とか。
こういった小さな勝利を心の中で三回繰り返すと、気持ちが盛り上がるので、相手にのまれなくて済むそうです。
あえて相手の弱点に目を向けるわけなので、ちょっと気がひけるような気もしますが、そもそも相手が攻撃を仕掛けてきているのだから、この場合に限っては罪悪感を感じる必要もないでしょう。
本質的な目的は「勝ち負け」ではなくて、「相手にのまれず冷静になる」ことですし。
普段からやっていると、悪いほうにばかり目がいく癖がつきそうなので、要注意ですが。
さて、相手にのまれないようになったら、次は、攻撃に対して「どう切り返すか」であります。
巧い切り返し方の詳細は本書をご覧いただきたいのですが、個人的に印象に残ったところの感想を次に記します。
ちょっと反撃アレコレ
反射(相手の話を要約して返す)
私がすでに心がけていたのが「相手の話を要約して返す」というもの。
「あなたは○○と思っているのですね。そのようにお考えであることは理解しました」的な。
(参考記事)
これだけで相手が軟化するケースって、かなり多い気がします。
誰しも、理解してもらえた、と思うとそれだけで結構満足するんですよね。
相手が軟化したところで「私はこう考えています」と言うと、伝わることも(たまには)あったり。
具体例として、以前繰り広げた伯母との会話を思い出してみます。
伯母「早く結婚しなさい!! 将来どうやって生きていくの!」
私(あー、またこの話題かよ……何度も事情を伝えているのに、伯母さんには理解できないんだよなぁ。このままじゃ、永遠に平行線だし、とりあえず、同意してみるか)
私「うん、伯母さんが結婚しろと言う気持ちも理解できるよ」
(この時点で伯母「そうでしょうよ」とすでに満足げ)
私「伯母さんの意見も本当によくわかるけど、私は……云々(自分の考えを言う)」
伯母「まったく、しょうがないねぇ。どうしてこんなふうになっちゃったのかねぇ」
ってな具合で、ただ反論するよりも比較的早めに終了させることができました。
相手の話を要約して返しても埒があかない、という場合も多々あると思います。
そのようなときの対処法も本書に記載されていますので、ご参考になさってください。
悪口や皮肉には質問返し
悪口を言う人は「自分が言われて一番ヘコむことを言っている」
ゆうきゆう『やられっぱなしで終わらせない!ことばのゲリラ反撃術』すばる舎(2012)Kindle版 位置No.1033
相手はあなたを攻撃することで、無意識のうちに、その急所を、あなたにも伝えているのです。
ゆうきゆう『やられっぱなしで終わらせない!ことばのゲリラ反撃術』すばる舎(2012)Kindle版 位置No.1063
悪口を言われると冷静さを失ってしまって気づきませんでしたが、たしかにそうですよね。
「悪口=攻撃」なのだから、一番ダメージのある「悪口」を放ってくるはず。
悪口を言う人は、無意識のうちに「何がもっとも堪えるか」ということを頭の中でサーチしているはずなのです。
このとき、自分の価値観を投影してしまうでしょうから、結果的に「もしもそれを言われたら自分はへこむ」ような内容になりやすいでしょうね。
たとえば「そんなことも知らないの?」とバカにしてくる人は、自分こそ「無知」と言われることを恐れている、ということでしょう。
相手の悪口への対処として使えるなと思ったのが
相手の言う悪口に関わる事実を質問形式で突いてみる
ゆうきゆう『やられっぱなしで終わらせない!ことばのゲリラ反撃術』すばる舎(2012)Kindle版 位置No.1100
悪口、とりわけ皮肉に対しては「今おっしゃったのはどういう意味でしょうか?」が効果的ですね。
あえて言葉を濁しているのに、そこを明言化させられるのは相手としても困るわけですから。
あるいは、そっくりそのまま返すという手も。
例えば相手が「てめえ!」と罵ってきたなら、「てめえ……、ですか……?」と繰り返す。
汚い言葉を使ってしまったことに相手がハッとなれば、それだけで「ちょっと反撃」成功ですよね。
あっさり「貴重なご意見ありがとうございます」と引いてしまう手もあり。
私はこれ以上関わりませんよ、という断固たる意思表示ですが、丁寧な言葉づかいなので、相手もそれ以上絡みにくい。
やり方はいろいろありますが、慣れも必要そうです。
ともあれ、自分を守ることにつながるわけなので、必要に応じて意識していきたいと思います。
おわりに
「言い返さないままでいると評価が下がる」
これ、もっと早いうちに知っておきたかったなあ、と思いました。
小学生とか中学生の頃から。
子供の方が遠慮がないですから、悪口なんて日常茶飯事でしたものね。
「ちょっとだけ反撃」をうまく使えれば、いろんな場面でもっとうまく渡れたかな、と悔やまれます。
振り返ると「(嫌な奴に)踏み込ませないのがうまい人」というのがいましたよね。
彼ら・彼女らは、自然に「必要に応じてちょっと反撃」とか「うまく距離をとる」ということができていた人なんだろうなあ、と思います。
逆に、防衛的になりすぎて「反撃の度合が強め」のため、「決して浮いたりはしていないけど、親しい友達はいない」という人もいました。
難しいものですね。
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