ししもとの読書ノート

生きづらさの軽減をめざして

ひらめきには「ぼんやり」が必要だった |感想『「ぼんやり」が脳を整理する』

はじめに


会社員をしていた頃、「つい、ぼんやりしてしまう」ことが悩みの一つでした。

自分とて、仕事中にぼんやりなどしたくないのです、決して。
さっさと仕事を終えて早く帰りたいのだから。
それに、大事な作業でぼんやりしたらミスしてしまいますし。

なのに! ふと気づくとぼんやりしてしまっている。
口を開けた魚みたいにただボーっとしそうになることもあれば、さっきまで仕事のアイデアを考えていたはずなのに、いつの間にか全然別のことを考えている、なんてこともある。

その度に「ああー、いかんいかん、またぼんやりしてた。集中せねば! 頑張らねば!」と自分を鼓舞していました。
しかし、ぼんやりを禁じる度に苦痛が強まり、効率が下がっている気もしていました。

その後、会社員をやめ、フリーに。
もちろん限度はありますが、ぼんやりを禁じなくてよい環境になりました。

会社員時代に封じ込めたぼんやりを取り戻すかのように、ぼんやりし放題。

そしてふと思ったのです。
こんなにぼんやりしていて大丈夫なのか、私は、と。

会社員の頃の「ぼんやり」は、睡眠不足とか忙しさとか疲れとか、仕方ない部分もあったと思うものの…。

しかし、フリーになって時間の使い方を調整できるようになってもなお、それなりにぼんやりしてしまう。

そんなときに書店で目についた本です。


菅原洋平『「ぼんやり」が脳を整理する~科学的に証明された新常識』大和書房(2016)

「ぼんやり」が脳を整理する~科学的に証明された新常識

「ぼんやり」が脳を整理する~科学的に証明された新常識

 

 

 

どんな本?

タイトルの『「ぼんやり」が脳を整理する』からもわかるように、ぼんやりにも大事な役割があるということを詳しく解説しています。

なんと、ぼんやりは、脳がひらめきを得る過程においては欠かせない行為だというではありませんか。

人間の脳がひらめくときに必要なのは

法則① 気づきをつくる
法則② ぼんやりする
法則③ 自分を外から見る

引用元:菅原洋平『「ぼんやり」が脳を整理する~科学的に証明された新常識』大和書房(2016)p.5

 この三つの法則を正しく実行できれば、ひらめきを生み出すことができるといいます。

本書では、この三つの法則を実行する力を向上するための、考え方や実践方法が書かれています。

本記事では、三つの法則のうち「ぼんやり」に注目して感想を記していきます。

 

よかったところ

なぜぼんやりが必要なのか

上に示した三つの法則にも関連しますが、ひらめきに関わっているのが、次の三つの脳内ネットワーク(詳しい説明は本書に任せ、ざっくり書きます)。

①実行系ネットワーク
 集中したり、注意したり、覚えるときなどに活用
 →仕事に取り組んだり、アイデアを練ったりするときに使う

②デフォルトモードネットワーク
 記憶したり、記憶を整理したり、記憶を検索したり
 →ぼんやりしているときに活発化

③セイリアンスネットワーク
 実行系ネットワークとデフォルトモードネットワークの切り替えを行う


ひらめきまでの流れとしては、次のようになります。

実行系ネットワークを使用して知識を入れる

デフォルトモードネットワークによって知識を整理、記憶したり

実行系とデフォルト、二つのモードを両立させる(メタ認知の状態)
情報収集とまとめ作業が同時に行われる
※最終的にひらめくためにはメタ認知の状態が必要

ひらめき

三つのネットワークをバランスよく働かせることによって、ひらめきの必要条件が揃う、というわけです。

つまり、頑張る系の実行系ネットワークばかり使用してもNGということ。


例えば、「記憶力が落ちた」と感じた場合、覚えることを強化しようと記憶トレーニングなどをしがち。しかし、これはNG。

脳の働きを胃腸の働きに例えると、

情報を消化

消化物(情報)から必要なものを選ぶ(意識を向ける)

吸収

というプロセスになります。

ということは、覚えることを強化しようとするのは、胃の調子が悪い(記憶力が落ちた)から、消化能力(記憶力)を上げるために、たくさん食べて(多くの情報を入れて)鍛えようとしているのと同じこと!

胃の調子が悪いのにたくさん食べてはますます悪化しますよね…。

記憶力に関しても同じ。
脳に情報が溢れているのに、さらに覚えようとしても、吸収できないわけで。

この例えはすごくわかりやすいな、と思いました。


自分自身が会社員をしてた頃のことを振り返ってみると、仕事ばかりする=実行系ネットワークばかり使う、という状態でした。

しかも、ぼんやりを自分に禁じていたので、デフォルトモードネットワークが活発化する時間が少なく、インプットした情報が定着しない。

すると、あれもできてない、これも…と焦るようになり、ますます頑張ろうとする→実行系ネットワークを無理に働かせる。

デフォルトモードネットワークへの切り替えが悪くなる。

脳のエネルギーは限られているので、疲れ果てる。


というようなことが起こっていたのだと今になって理解しました。
つい「ぼんやり」って、実はとても大事だったのですね。

ただ、会社などでの仕事中だと、「ぼんやり」するのはどうしても気がひけてしまいますが…。
オフィス内を少し歩いたり、お手洗いに行ったり、と工夫が必要かもしれません。

90分作業したらたとえ途中でも一旦区切って、ぼんやりしたりするのが良い、とのことなので、あらかじめ「90分はしっかり集中します。そのかわり、その後10分休みをいただきます」と宣言しておくのもアリかもしれませんね(職場の雰囲気や仕事内容にもよりますが)。


悪いぼんやりに注意

ぼんやり礼賛、のようになってきましたが、悪いぼんやりもあります。

ヒューマンエラーの原因となるぼんやりです。
とりわけ、運転中とか、高所作業中とか、実験作業中なんかにぼんやりが起こってしまうと、重大な事故につながりかねないので、要注意です。

どうして大事な場面でぼんやりが起こってしまうかというと、それまでに実行系ネットワークを使いすぎているから。

あらかじめ戦略的に良いぼんやりを組み込んでおくことが大事です。


また、事故につながるような場面でなくても、悪いタイミングで起こるぼんやりは、ネガティブな思考を呼び起こしてしまいます。これも、行き詰ったのに粘って考え続けたせい。

悪いタイミングでデフォルトモードネットワークが働いてしまう状態として、強迫神経症が挙げられるとのこと!!

これには驚きました。

以前の記事で書きましたが、私、強迫神経症に悩まされたことがあるのです(現在はほとんどよくなりました)。

強迫症状に最も悩んでいたのは、まさに会社員として仕事を頑張っていた頃でした。
実行系ネットワークばかり使用したことが一因になっているのでしょう。

 

www.shishimoto-yuima.work

こういった、悪いぼんやりを避けるには、感情が起こる前、情動(身体の変化:呼吸が浅くなる、心拍が速くなる、目が乾く、耳が詰まるなど)のタイミングでぼんやりを始めるべし。

どうして情動のタイミングがいいかというと、情動は、自分と思考の間に距離があるから。

ここは個人的に、理解がやや不十分な気もするのですが、視野が狭くなりにくい、というか、一つの考えに執着しない状態、ということなのかな、と思います。


私自身は感情が起こってから、悪いぼんやりを繰り返すタイプでしたので、情動のタイミングで、というのは今後気をつけよう、と思ったのでした。

ただ、慣れるまではこの情動に気づくのも難しいのかも。


私の場合は、「飽きた」状態の一歩手前、「そろそろ飽きそう」という状態がなんとなくわかるので、そうなったら、ぼんやりしてみる、というのを試しています。

今のところ、あまり疲労感を感じることなく、長時間作業できる気がしています。
もう少し続けてみて、また感想を追記します。


おわりに

「ぼんやり」をものすごく悪者だと思ってしまっていましたが、脳にとっては必要だったのですね。

どんなことでも、「自然にやってしまう」こととか「そうなってしまう」ことというのは、何かしらの意味があるのだろうと思います。

それを「こうあるべき」という固定観念とか、誰かに押し付けられた常識などによって無理やりねじ伏せようとするから、最終的に芳しくない方向にいってしまうのだろうな、と思いました。

なお、本書は、タイトルこそ「ぼんやり」ですが、ひらめくための具体的な方法も多々記載されています。
(ひらめきを生み出す法則を伝える目的で書いた、とまえがきにもある)

アイディアに行き詰っている方には参考になると思います。

「ぼんやり」が脳を整理する - 株式会社 大和書房 生活実用書を中心に発行。新刊案内、書籍目録、連載エッセイ、読者の広場。


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同じ著者さんの本、以前にも読んでいました。

 

www.shishimoto-yuima.work