大人になってからの心の苦しみの主要な原因は、本当の自分を忘れてしまったことによる方が大きい。本当の自分を忘れてしまったから苦しいのである。
加藤諦三「愛されなかった時どう生きるか 甘えと劣等感の心理学」PHP(1989)p.177
私自身も、本当に本当に、実感を伴って、そう思っています。
逆をいえば、「本当の自分を取り戻す」ことができれば、苦しさはある程度消えるということ。
永遠にも思える、毒親育ち特有の苦しみ。
その渦中にあるときは「一生このままなのでは」と絶望しますが、実は回復できる可能性も多いにあるのです。
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親の顔色をうかがっているうちに、期待に応えているうちに、自分を失っていった
私はいかにしてアダルトチルドレンになっていったのか (~24歳) でさんざん書き散らしていますが。
私の母は、強い劣等感(とくに学歴)の持ち主だったので、母の機嫌をとるために、私は「学業成績が良いこと」にこだわってしまいました。
勉学が本当に好きな子・向いている子だったら、「母は私の才能を伸ばしてくれた、感謝、めでたしめでたし」ということになったのかもしれません。
しかし私は残念ながら「そこまでではなかった」のです。
そのことは早い段階で自ら痛感しつつも、「せめて努力でカバーせねば」と猛烈に焦ってしまいました。
とくに大学に入ってからは巻き返そうとして、睡眠時間を削るような、かなり無理な勉強の仕方をしていました。若かったからなんとかなりましたが、電車に乗っていても何をしていても、常にそこらへんに寝転びたい衝動に駆られるほどでした。
そのおかげか、いわゆる「いい会社」には入ったのですけれど、その段階までに精神的にも肉体的にもさんざん無理を重ねてきているので、もう入社直後からヘトヘト。
マラソンでいえば、準備のジョギングで本気を出しすぎて、ゼェゼェと息を切らしながらスタートラインに立ったようなもの。
せめて興味のあることならまだ救いはあったでしょう。
しかし、そもそも、そこまで興味のないことを選んできてしまった。
一生懸命続けているうちに興味がでてくるかもしれない、そう願いましたが、苦しみは募る一方でした。
こんなにも努力してきたのに、何ひとついいことがない。
そのことに愕然としました。
どうして?
”努力”って、いいことなんじゃないの?
幸せになるために必要なことなんじゃないの?
あんなに努力してきたのに、どうして私は、こんなに苦しい日々を送っているの?
何度も自問自答しているうちに、気づきました。
”自分”がからっぽなのだ、と。
「本来の私」から発生した要素が皆無なのだ、と。
「心」を無視しているのだ、と。
操り人形なのだと。
魚なのにエラ呼吸で陸を駆けているようなものだと。
軽自動車でレースに出ろと言われているようなものだと。
親や親戚の激しい「こうじゃないとダメ!」に従っているうち、「たぶんこうしたほうがいいんだろうな」と先読みして動くようにもなってしまった。
つまり、親の価値観システムがインストールされてしまっていた。
そのシステムに従い続けること、それはまさにコンピューターの動き方と同じでした。
でもそれが間違いだとはっきりとは気づけませんでした。
愛されたかったから。
のどがあまりにも乾いていると、泥水でも塩水でも飲みたくて仕方ないのと同じで。
愛情を求めすぎて、目が、世界が、曇っていました。
何が真実か、良いことか、誰が良い人か、全く見えていなかったのです。
他人に奉仕しても、他人の否定的な感情のゴミ捨て場になってみても、そんなことで心の苦しみは消えない。
加藤諦三「愛されなかった時どう生きるか 甘えと劣等感の心理学」PHP(1989)p.177
「わたし」を取り戻す
親の価値観システムに従い続ける生き方には、いつか限界がきます。
まずは「苦しみ」として信号が出て、それでも我慢していると、大抵は精神症状として現れます。人によっては体調不良として生じます。
私も、不潔恐怖・疾病恐怖、食べること自体が怖い、など、頭ではおかしいとわかっているのに制御できない事態になっていき、ますます「本来の私」から離れていくのを感じました。
「このままじゃ心か身体、どっちか本格的に壊すな」と本気で恐ろしくなりました。
そこまできてやっと、すべてを捨て、人生を立て直す決意をしました。
苦しみから逃れるためには、本当の自分になる以外はないのである。
そのためには、まず今、あなたの周囲にいる人達を喜ばそうとする感情にうちかつことである。
加藤諦三「愛されなかった時どう生きるか 甘えと劣等感の心理学」PHP(1989)p.177
「本当の自分になる」「自分を取り戻す」ための具体的な方法としては、このへんの記事が参考になるかなと思います。
一気に全部やろうとすると途方もない(というか現実的に無理と思います)ので、できることから、気が乗るところから、ほんの少しずつやっていけばいいのだと思います。
途中でやめてしまっても、気づいたらまた再開すればいいのです。
ただしい方向に歩き続けていたら、いつか必ず目的地に着けます。
途中で迷ったり、迂回しても、正確な地図や方位磁石を持って歩き続ければ、たどり着けます。
私も10年以上かかり、しかもいまだに完全にとはいかず、苦悩することもありますが、それでもだいぶ自分を取り戻せました。
自分と仲直りできると、ずいぶん楽になります。
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おわりに
・機能不全家族で育った人、毒親育ちの人は、親の顔色うかがって気を遣っているうちに、親のための人生を生きてしまう
・しだいにそれが習慣となって、大人になっても続いてしまう
・すると、別の人の人生を生きているわけなので苦しみがつのる(魚なのに大陸を駆けようとしているなもの)
・苦しみから逃れるには、本当の自分を取り戻す
・本来の自分はどういう人間なのか、何が好きなのか
・時間はかかるけれど、少しずつやっていこう
・本来の自分に戻ると本当にラクになる