ししもとの読書ノート

生きづらさの軽減をめざして

かけがえのない人間でありたい |感想『ココ・シャネルの言葉』山口路子

書店で平積みされていて、なんとなく手にとった本。

山口路子『ココ・シャネルの言葉』(大和書房・2017)

 

ココ・シャネルの言葉 (だいわ文庫)

ココ・シャネルの言葉 (だいわ文庫)

 

 

最初のページをめくると、こんな言葉が視界に飛び込んできました。

 

「どんな人になりたいですか?」
と尋ねられたなら、あなたは何と答えますか?

シャネルは、生涯を通して
「かけがえのない人間でありたい」と
自分に答え続けた人でした。

引用元:山口路子『ココ・シャネルの言葉』大和書房(2017)p.3

 

 

このページで「買い」に心が傾いてしまいました。


才能あふれたシャネルとはほど遠いところにいる私ですが、「かけがえのない人間でありたい」ということは子供の頃から思ってきたこと。

個人的な話で恐縮ですが、私の場合は、家庭環境があまり良くなかったため、「特別な (有用な) 人間でなければ捨てられてしまう」という強迫観念がありました。

周りの子供はのほほんと暮らしているように見えるのに、私はどうして「特別な子」でないと生きていけないのだろう。

そうか、それは私という存在の、本質的価値が低いからだ。

本質的価値の低さを補うために、特別な何かを入手せねばならない。

当時はうまく言語化できませんでしたが、振り返るとそういう感覚だったと思います。

そのような無価値観、いうなれば劣等感の裏返しとして

「かけがえのない人間でありたい」

が自分のなかに生じたのだと思います。
(厳密にいえば、誰もがかけがえのない人間ではあるのですが…)


シャネルは12歳のときに、姉とともに孤児院に預けられていますので、「自分の存在価値」というテーマについて、誰よりも切実に戦ってきたのかもしれません。

もとの才能もあるでしょうが、かけがえのない自分を求め続けた結果、ファッション界に革新を起こせたのだろうな、と思いました。
 

共感したところ、それをもとに考えたこと

特に共感したところを引用し、その後に自分の感想を記します。

だらしなさへの嫌悪

醜さは許せるけど、だらしなさは絶対許せない。

引用元:山口路子『ココ・シャネルの言葉』大和書房(2017)p.42


 顔の造形やら骨格など、変えられないところはどうにもなりませんが、清潔感をはじめとする、自分で気をつけられるところを丁寧に、というのは個人的には大事だなぁと思います(自戒を込めて)。

まぁ、気力がないとか、体調とか、いろんな理由でだらしなくなってしまうことも人生にはあるということも知ってはいるのですが。

個人的には、性別年齢問わず、「その人なりのおしゃれをしている」方を見かけると、素敵だなー、ととても嬉しい気分になります。

何より、身だしなみを整えると、自分自身がしゃきっとしていい気分になるので、そこには少しの努力をしていきたいなと思っています。

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身だしなみを整える



 

踏み込まないで

私の頭のなかに秩序を押しこもうとする人々が嫌い。

引用元:山口路子『ココ・シャネルの言葉』大和書房(2017)p.53


「正しさ」や「常識」って、「よかれと思って」押し付けられがちですよね。

「正しさ」「常識」を振りかざして踏み込まれるとき、とても嫌な気持ちがして、でも反論するほどのエネルギーもなくて、若い頃はとにかく悶々としていました。

最近になってようやく「確かにそれは常識なのかもしれないけれど、私はこう思うんだよなぁ」と心の中で思ったり、相手によってはやんわりと言えるようにもなって、それだけでも随分と楽になりました。

踏み込んでくる人のことを「嫌い」と思ってもいいのです。

彼らは一見正しいように見せてきますすが、こちらの気持ちを無視して踏み込み続けている時点で、ある意味では正しくないのだろうと思います。

とはいえ、口に出すと揉めるだけですから、押しつけてくる人にはなるべく近づかないというのがかなり有効な方法だと、最近は思うようになりました。

自分自身も、うっかり自分なりの正しさを誰かに押しつけないようにせねば、と思いました。

自由が大事

「ふつうはこうあるべき」みたいな価値観で生きてきて、けれど、その「ふつう」が自分には向いていないとわかったのは20代後半でした。同時に、私にとっては「自由」がとても大切なのだと思い知らされました。

以来、「自由が一番大事で、お金はさほどいらない」と思っていたのですが、お金があったほうが自由を確保しやすいということにも最近気づきました。

シャネルも次のように述べています。

物をあれこれ買うなんて考えもしなかった。
自分の自由を買わなくてはならなかったから。
それにはいくら出してもいいと思っていた。

引用元:山口路子『ココ・シャネルの言葉』大和書房(2017)p.142



お金で自由を買えるのだ、と思えば、仕事を頑張ろうという気持ちも少しは湧いてくる気がします。

とはいえ、仕事自体が向いていないと、やっぱり自由からは離れていく。
かといってお金を得ないわけにはいかない。

難しいけれど、何事も、いろいろ試していくうちに、ちょうどいい塩梅の安定点みたいなものが見つかるのではないか、と思って試行錯誤中です。


おわりに

人と違っていることはいけないことだ、と心のどこかで思っていました。
でも、厳密にいえば、そもそも一人ひとり違っているのですよね。
みんな違うからこそ社会や文化が発展してきたわけで。

かけがえのない人間であるためには、
人と違っていなければならない。

引用元:『ココ・シャネルの言葉』(p.168)


シャネルは個性的であったからこそ、革新的な創作物を多々生んだのだと思います。

人と違っていることを恐れたり、やみくもに悩むのではなく、それをうまいこと生かせるよう考えていくことが大事なのだと思います。

それをわかっていても、絡みつく「他者の目」から開放されることは難しい。


私は「かけがえのない人間でありたい」と思いつつ、同時に「みんなと同じだと安心」という思いも抱えていました。

理想を言うなら、基本的にはみんなと同じで、それに加えて、何か特別な能力がほしい、ということです。

欲張りですし、どこか矛盾している感じもします…。

確かに世の中には天から二物も三物も与えられた人はいますが、初期条件のよしあしは自分の力の及ぶところではなく。

だから、今あるものを育てていくしかないのですよね。

今は普遍的な能力であっても、それをコツコツ磨いていって、特別な能力にしていく。
その過程で批判されたりすることもあるでしょう。

そこで「自分ってやっぱおかしいのかな」とか思いすぎず、「私は私」と進んでいけるかどうかが人生の質に大きく関わってくるような気がします。


静かな勇気が湧いてくる一冊でした。

 




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